それでもアフガニスタンには今も根強い性差別意識が残っており、男女平等は遠い夢でしかない。ラフマニさんも、タリバンを名乗ってパイロットをやめるよう脅迫する電話や手紙を受け取った経験を持つ。2013年には脅迫があまりに激しくなったため、ラフマニさんは2か月間、国外で過ごすことを余儀なくされた。

 軍用機のごう音が鳴り響く中、ラフマニさんは「私や家族を傷つけると脅してきたのです。しかし私にとって唯一の選択肢は心を強く持ち、脅迫を無視することでした」と語った。

 ラフマニさんは常時、護身用の拳銃を携帯する。男性のいやらしい視線には既に慣れたが、狙われるのを避けるため軍服姿で基地の外に出ることはない。「街を歩いたり、ショッピングに出かけたりというシンプルな生活はもうできません。私の自由はすべてなくなってしまいました」とラフマニさんは話す。

 しかし、肉体的な脅迫よりもラフマニさんの心を痛めるのは、まるで中世にタイムトリップしたかのようにアフガニスタンに浸透しきった保守主義なのだという。

 カブールでは今年3月、街角でお守りを売っていた男性を「迷信を広げている」と非難したとされる27歳の女性ファルクフンダ(Farkhunda)さんが、このお守り売りの男性からコーランを燃やしたという濡れ衣を着せられて男性の集団に暴行され殺害される事件が起きた。この事件に深く傷ついたというラフマニさんは、「動物は他の動物にこのようなことはしません。しかも、事件を起こしたのはタリバンではなく、アフガニスタンのごく普通の若者だったのです」と語った。