【5月11日 AFP】自然の猛威を強烈に感じさせる噴火の写真を撮るチャンスに、私は本当に恵まれなかった。

 チリには約90の活火山があり、それらが時折、うなりを上げて噴火する生の姿は、すべての写真家が撮影を夢見る一枚だ。だがこの国は極端に細長いため、どこかで噴火が起きれば国内便はキャンセルされてしまう。つまり、噴火の現場まで何時間もかけて車で行かねばならず、到着した頃には活動がほとんど収束しているわけだ。

 私もそんな悔しい経験を何度もしている。2010年にチリ南部のチャイテン(Chaiten)火山が噴火したとき、私は国際サミットの取材のためにペルーにいた。翌年、プジェウエ・コルドンカウジェ火山群(Puyehue-Cordon Caulle)で噴火があったときも、大統領選の取材のためにペルーにいた。昨年3月には、私が拠点としている首都サンティアゴ(Santiago)から南へ700キロ離れたビジャリカ(Villarrica)山が噴火したが、現場に到着したときにはほぼ収束しており、火山灰の写真を撮っただけだった。

 それでもチャンスは再びめぐってきた。4月22日、チリ政府はカルブコ(Calbuco)火山の54年ぶりの噴火が近いとして、周辺地域に避難命令を出した。位置はサンティアゴから南へ約900キロで、避難命令が発令されたのは午後6時。私は午後8時にはAFPの特派員ミゲル・サンチェスと一緒に車を走らせていた。10時間かかる道のりだが、すべてが終わってしまう前に現場に着きたい一心だった。

 南へ移動しながら、私はカルブコ山のふもとにある街プエルト・バラス(Puerto Varas)に住む友人たちに電話をかけ、その中の一人に彼女が携帯電話で撮った写真を送ってもらった。これを車の中から携帯電話でAFPの中南米支局へ転送した。それから、周辺地域にいたプロのカメラマン一人をどうにか捕まえ、高画質の写真を買うこともできた。これでAFPが契約メディアに提供できる写真は確保できたわけだ。だがもちろん、自分のカメラで決定的瞬間を撮りたいと思った。

 翌朝の5時少し前、私たちはジャンキウェ(Llanquihue)湖のほとりにあるフルティジャール(Frutillar)の町で止まることにした。空は晴れ渡り、湖の向こう側、約20キロ先にカルブコ火山が見えた。プエルト・バラスからのパノラマのほうが衝撃的だったが、活動が突然やんだり空が曇ったりしてチャンスを逃すようなリスクを冒したくはなかった。

 その判断は正しかった。まだ夜明け前でひどく寒かったが、道路に人けはいっさいなかった。政府の外出禁止令は撤回されたばかりで、湖を挟んで火を噴く火山の前に立っているのは私たちだけだった。大きな爆発音が聞こえ、火口から溶岩が吹き出し、火山岩や火山灰の摩擦による静電気で発生する火山雷が闇に輝いていた。

 私は約30秒の長時間露光で撮影し、その間に空中で起きていたものすべてを収めることができた。湖岸から裸眼で見ていたよりも、ずっと印象的な光景になった。今年に入り2回、チャンスを逃した後に、私はついに長く夢見ていた写真を撮ることができた。

 約20分後に噴火は止まった。ぎりぎり間に合ったというわけだ。まさに3度目の正直だった。(c)AFP/Martin Bernettii

この記事はチリ・サンティアゴを拠点とするAFPの写真記者、マルティン・ベルネッティが書いたコラムを翻訳したものです。