■隠される盗掘品

 イタリアは、ユネスコ(UNESCO)に対して、紛争地域にある古代遺跡の保護を目的とした武装タスクフォースの結成を提案しているが、専門家の多くは、現状を鑑みると提案の実現性は低いと言わざるを得ないと口をそろえる。言い換えると、貴重な古代遺跡が破壊され、遺物が美術市場に流出していくさまを、指をくわえて眺めることしかできないということだ。

 これら盗難遺物について、ロンドン警察で美術品やアンティーク関連の問題を担当した経験を持つバーノン・ラプリー(Vernon Rapley)氏は、短期間に多くが流入して市場に溢れかえらないよう、その流通量は自ずと制限されるとみている。米軍によるイラクとアフガニスタン侵攻後、市場には大量の盗品が出回った。

 ラプリー氏はAFPに対し、盗品は当事国や周辺国の倉庫に山積みにされている可能性が高く、事態が収拾した後に少しずつ市場に出回るだろうと説明した。

 国際刑事警察機構(インターポール、InterpolICPO)で、美術品や文化財の不法取引を取り締まるチームのリーダー、ステファン・セフォ(Stephane Thefo)氏も、盗掘品の多くが数年間は姿を消すという見方に同意する。そして違法な取引を取り締まることが盗掘を防止する最善策だと指摘した。

 セフォ氏は、「違法取引が可能な市場を狭めて需要を減らすことで、供給も次第に減少するはず」と説明し、美術品の違法取引を取り締まる法律を各国が整備する必要があると述べた。同氏によるとドイツでは現在、立法に向けて協議が進められているという。

 英ロンドン(London)のビクトリア&アルバート博物館(Victoria & Albert Museum)で最近開催された会議では、イラクやシリア、マリ、リビア、イエメンなどの紛争地帯における文化遺跡破壊について話し合われ、文化遺跡における美術品の目録作りなど、適切な管理の必要性が求められた。デジタルフォーマットでのカタログ作成が行われた場合では、盗品の発見につながることが多いという。

 インターポールでは現在、盗品のデータベース作成が進められている。またロンドンの美術商でIADAA理事を務めるジェームス・イード(James Ede)氏も、関係者らに対し、美術商への情報提供を呼びかけている。

 イード氏は、「盗まれた文化遺物は、遅かれ早かれ市場に出回る。我々の挑戦は、これらの認証と安全を確保した上での当事国への返還だ」と語った。(c)Alice RITCHIE