【5月8日 AFP】先月25日にネパールを襲ったマグニチュード(M)7.8の大地震で、トレッキングコースとして人気のあるランタン(Langtang)の村に5日間取り残された米国人観光客コーリー・アスコラーニ(Corey Ascolani)さん(34)は、大規模な土砂崩れで自動車大の岩が無数に落下し、建物を破壊していく様子を目撃した。

 大地震はトレッキングシーズン最盛期に発生した。国境を越えれば中国チベット自治区という位置にあるランタンの中心的な村バンブー(Bamboo)はトレッキングコースの始点となっており、壊滅的な被害を受けた。400人の村民の死者数はいまだに不明だが、地元当局によれば、これまでに外国人13人を含む60人の遺体が見つかっており、この他にネパール人150人超と観光客約100人が埋まっているとみられる。

 アスコラーニさんが村で屋外のカフェに立ち寄った時、地面が揺れ始め、巨大な岩が山あいの両側の崖に轟音を立てて落ちていった。「僕たちはあちこち走り回っていた。岩が落下し続けていたから、どこにも逃げようがない感じだった。ミニバンくらいの巨大な岩が建物を押しつぶして、木々を真っ二つに割っていった」と、カトマンズ(Kathmandu)でAFPの取材に応じたアスコラーニさんは説明した。

 地震でアスコラーニさんの他、観光客約60人とネパール人20人が、徒歩かヘリコプターでしか到達できない辺境の山あいに孤立した。急な傾斜からの落石が続いていたため、外へ出ることはできなかった。最終的に救助されるまで、ヘリコプター3機が行き来するのをただ眺めるしかなかったという。

 地震から3日目、アスコラーニさんたちの元へようやくヘリコプターがやって来たが、パイロットから日本人の救助のためにだけ来たと告げられ、希望は打ち砕かれた。それから数時間後にヘリ2機が到着。今度はイスラエル人のみの救助だという。ハイカーたち皆で抗議した結果、負傷したネパール人2人を優先することになった。

 そこからさらに36時間が経過してもヘリが来る兆しはなく、村の雰囲気も次第に重苦しくなっていった。その後、ようやく米軍のヘリが到着し、数回に分けて全員が救助された。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY