【5月5日 AFP】イスラエル政府は4日、エチオピア系市民に対する人種差別の取り締まりを強化すると約束した。同国では警察官の不当な暴力に抗議するエチオピア系市民のデモが相次いでおり、当局が緊張緩和に努めている。

 イスラエルでは先週、軍服を着たエチオピア系兵士が警察官2人から暴行される様子を撮影した動画が発端となってエルサレム(Jerusalem)で抗議デモが行われ、少数派のエチオピア系市民の間に長年くすぶっていた怒りが爆発。続いて3日にテルアビブ(Tel Aviv)で行われた抗議デモでは、一部が暴徒化した。

 イスラエルに暮らすエチオピア系市民の状況に注目が集まる中、政府は事態の鎮静化に直ちに乗り出し、レウベン・リブリン(Reuven Rivlin)大統領は「過失」があったと認めた。

 一方、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、エチオピア系コミュニティーの指導者らと3時間にわたって協議。解決を要する「根深い問題」があると認めるとともに、「人種差別という現象を非難し撤廃していくため、われわれは一致団結しなければならない」と述べた。

 首相はまた、暴行を受けたとされる兵士とも面会し、一連の抗議デモに数千人が集まって怒りをあらわにしたことについて「紛れもない苦痛」があるからだとの認識を示した。

 兵士暴行動画を受け、エルサレムでは4月30日に約1000人が集結して初のデモが実施され、警察の暴力と人種差別の撤廃を求めた。

 続いて今月3日にテルアビブで行われた抗議行動には、警察発表で3000人、主催者発表では1万人近くが参加。一部が警察と衝突し、警察はスタングレネード(殺傷力のない手投げ弾)や放水銃、唐辛子スプレーを使って鎮圧を図った。デモ隊は石や瓶、椅子などを投げて応戦。警察官55人とデモ参加者12人が負傷した。また、暴動と警察に対する攻撃の容疑で43人が逮捕された。

 イスラエルには約13万5000人のエチオピア系市民がいるが、ここ数年で最悪の暴力的な抗議行動を受け、国内のあつれきが深まる恐れが出ている。(c)AFP/Hazel Ward