【4月29日 AFP】英ロンドン(London)の美術館で世界の名画の中に中国製の複製画1点を紛れ込ませた絵画展で28日、どの絵画が複製だったかが明かされた。複製を見抜いて当てようと試みた来館者たちと、複製を作成した中国の工房の対決は、工房側に軍配が上がった。

 この絵画展は2月から約3か月間、ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー(Dulwich Picture Gallery)で開催されていたもの。レンブラント(Rembrandt)やルーベンス(Peter Paul Rubens)、ゲインズバラ(Thomas Gainsborough)といった巨匠たちの常設絵画270点に、複製画を大量生産している中国の工房による名画の複製を1点だけ紛れ込ませた。

 この企画はいわば美術愛好家への「挑戦状」として米国人アーティスト、ダグ・フィッシュボーン(Doug Fishbone)氏が考案した。企画を通じて名画をより丁寧に鑑賞してもらえるとの期待もあった。開催中には、複製画を見破ろうとおよそ3000人が挑戦。だが18世紀フランスの画家ジャン・オノレ・フラゴナール(Jean-Honore Fragonard)の作品「若い女」が偽物だったことを言い当てることができたのは、わずか300人だった。

 赤みが差した頬に赤い口びるの若い女性が、誘惑するような目つきでこちらを見つめているこの絵の本物と複製が並んでいるのを見ていた26歳の女性は、偽物は白い色が明るすぎると感じたと述べたが「本物と並べて展示されてるからそういうのは簡単で、自分はきっと当てられなかった」と語った。

 フラゴナールの複製画は美術館が中国・福建(Fujian)省アモイ(Xiamen)の工房に製作を発注したもの。製作費として美術館が支払った金額は、配達料込みで126ドル(約1万5000円)だった。

 主任学芸員のゼイビア・ブレイ(Xavier Bray)さんは、複製画を当ててもらうという試みへの反応は「非常に満足なもの」だったと語った。来館者数も増えた。絵を見るより先に作者や作品名を確認していた人たちが「絵画そのものをちゃんと見るようになった」という。

 ブレイさんによれば、特に子どもたちが大きな関心を示したという。「子どもたちには巨匠の絵画がどういうものかなどという先入観がない。だからまっすぐな気持ちで違いを見つけようとするんです」

 真作と複製画との違いについてブレイさんは、本物が「魔術師が描いたかのよう」であるのに対し、複製画は「工業製品であり表現力も皆無だ」と語った。(c)AFP/James Pheby