【4月30日 AFP】ラケルさんの恋人は彼女に暴力を振るった後、もう二度と過ちは犯さないと謝る手紙を送った。「二度としないと誓う。君を愛している。許してくれ」と、彼は書いた。手紙を受け取ったラケルさんは、ノートの端切れいっぱいに走り書きされた哀れなほど真剣な言葉を見て、彼とやり直すことにした。それから5週間後、彼はラケルさんを殴り殺した。

 南米ペルーで出版された新刊「ノ・テ・ムエラス・ポル・ミ(No te mueras por mi、僕のせいで死なないで)」には同様の例、25件が掲載されている。この本は、パートナーの暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)によって虐待された女性たちが受け取った、ラブレターや電子メール、携帯電話のメッセージと、それらが送られた後に起きた出来事が集められている。

 多くの話はラケルさんの事件と重なる。「俺は本当はこんな男じゃないんだ」「わざとやったんじゃない」「もう二度とやらない」といった言葉の後に、男たちはまた、暴力を振るうのだ。

 ペルーは世界の中でも女性に対する暴力が最も深刻な国の一つだ。政府によれば、過去6年で680人の女性が、自分のパートナーに殺害された。

 世界保健機関(WHO)が2005年に行った調査によれば、ペルーの内陸部では61%の女性が、パートナーである男性から身体的な暴力を受けたことがあると答えた。調査が実施された10か国(バングラデシュ、ブラジル、エチオピア、日本、ナミビア、サモア、セルビア、モンテネグロ、タイ、タンザニア)の中で最も高い割合だった。しかも、ペルー内陸部の女性たちの49%が、殴られる、蹴られる、引きずられる、武器で脅されたり攻撃されたりする深刻な暴力を受けていた。

 ノーベル文学賞を受賞したペルー人作家、マリオ・バルガス・リョサ(Mario Vargas Llosa)氏が前文を寄せている同書は、多くの被害者が声を上げられずにいるこの国で、DV問題に対する新しい解決法を模索して出版された。

「虐待されている彼女たちは届け出ることがないので、これまでずっと手を差し伸べることが難しかった」と、同書の編集に携わった女性の権利団体「ビダ・ムヘル(Vida Mujer)」のネリー・カンシオン(Nelly Cancion)代表はいう。「この本では、自分の証言によって他の女性たちを守りたいという使命感のある女性たちに、話してもらえるよう頼んだ」

 オンラインでも全編を読むことができる同書は、2部構成になっている。第1部では虐待者たちの愛の言葉が白いページに、元の形のまま印刷されている。それは手書きの手紙だったり、テキストメッセージのスクリーンショットだったり、印刷されたメールだったりする。

 第2部では、女性たちのその後のストーリーが、黒地の背景に白抜きの文字で書かれている。ほとんどがさらなる虐待に苦しみ、一生の傷を負った女性もいる。殺された女性もいる。

「私たちが助ける女性のほぼ全員が、相手から立ち去るべきかどうか悩んでいる。極限の暴力の中で暮らしていてもです。この本はそれを描いている。手紙が来た後に、彼女たちが生きなければならない暗闇がやって来るのです」と、カンシオンさんはいう。本に登場する手紙の「甘い言葉」は、警察に届け出ないよう、女性を説得していることが多いとカンシオンさんは指摘する。「つらい目に遭っているときの女性には『愛している、君が必要だ、もっと大事にするから』といった言葉を聞きたい気持ちがあるかもしれない。しかし、それは束の間の幸せにすぎず、人の行動というのは、時間が経っても変わらないのです」

「ノ・テ・ムエラス・ポル・ミ」は、notemueraspormi.com.で閲覧できる。(c)AFP/Moises AVILA