【4月27日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest)で25日、マグニチュード(M)7.8の大地震の影響で発生した雪崩が、山肌を滝のように流れ落ちながら、その進路上にあるものすべてを押しつぶしてきたとき、フランス通信(AFP)ネパール支局のアム・カナンピリ(Ammu Kannampilly)支局長はベースキャンプにいた。

 昨年4月、エベレストではシェルパ(ネパール人登山ガイド)16人が亡くなる雪崩が起きた。今回、地震によって発生したエベレストの雪崩の犠牲者はそれを上回り、これまでに18人の死亡が確認されている。カナンピリ支局長は、損壊したベースキャンプにいた生存者たちに恐怖の体験を聞いた。

■「山からのメッセージ」

 シンガポールを中心に研究活動をしている海洋生物学者のジョージ・フォールシャムさん(38)は、巨大な雪の壁に倒されながらも生き残ったことに信じられない思いで「今は登るべきときではないという」山からのメッセージのように感じたと語った。エベレストでは昨シーズン、前回の雪崩で登山中止となり、他の多くの登山者と同じようにフォールシャムさんも今シーズン、再び登頂を目指してベースキャンプにやって来たところだった。

 フォールシャムさんをがく然とさせたのは「白い50階建てのビル」のような雪崩だった。「走ったがただ押しつぶされた。起きようとしてもまた押しつぶされた。息ができず死ぬんだと思った。最後に立ち上がったとき(雪崩は)私にはほとんど触れずに通り過ぎて行った。信じられなかった」とフォールシャムさんは語った。

 登山仲間たちと一緒に空輸でエベレストを離れるのを待ちながら、フォールシャムさんは自分の夢が決してかなわないかもしれないことを、やむなく認め、「エベレストに登るために長年貯金してきたが、これは山が今は登るなと言っているようだ。2年間で2回もこうしたことが起きるとは、偶然が重なり過ぎている」と話した。

 米国人登山家で心臓専門医のエレン・ギャラントさんは「(ベースキャンプの)外にいました。すると巨大な、爆発したような雲が降りて来るのが見えたのです」と語った。さらに「走ってテントへ向かい、テントに身を投げ出すようにして滑り込みました。揺れが収まってから外に出て、医療テントに無線連絡すると彼らは、私ともう一人、インド軍の医師であるインド人登山家に頭部負傷者の手当てを依頼してきました。私たちは一晩中、一緒に働きました。薬を渡したり、点滴をしたりしました。治療した9人のうち1人は昨夜亡くなりました。25歳のシェルパでした。血圧が下がってしまい…私たちには何もできることがありませんでした」と話した。

 山岳ツアー会社ジャッグド・グローブ(Jagged Globe)に雇われているネパール人シェフ、カンチャマン・タマンさん(40)は「雪崩が来たときには食事用のテントにいたが、テントが吹き飛んだ」と語った。「去年の雪崩の後には、またここへ来ることに不安はなかった。家族にはベースキャンプで働くし、氷瀑(ひょうばく)とは違うから安全だと言っていた。けれど来年はまた戻って来るかどうか分からない。この山は痛みが多すぎる」と語った。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY