【4月27日 AFP】25日にネパールで起きたマグニチュード(M)7.8の大地震では、同国が誇る豊かな文化財にも大きな被害が出ている。専門家によれば「取り返しのつかない損失」だという。

 首都カトマンズ(Kathmandu)では12~18世紀に建てられた寺院や仏像の数々が、週末の昼どきに発生した地震で崩壊し、がれきの下に人々が閉じ込められた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産に登録され、観光名所となっている市内のダルバール広場(Durbar Square)では、200段のらせん階段で知られる9階建ての「ダラハラ塔(Dharahara Tower)」が礎のみを残して崩れ落ちた。地震発生時にちょうど塔に登ろうとしていて被災した観光客は、揺れが始まって数分で塔が崩れたとして「100人以上が中にいたのではないか」とAFPに話している。

 ユネスコは、古都パタン(Patan )やバクタプル(Bhaktapur)などと合わせ、カトマンズ盆地(Kathmandu Valle)にかつて栄えた王国の文化遺産がどの程度の被害を受けたのか、情報収集を急いでいる。

 ユネスコ・ネパール事務所のクリスチャン・マンハート(Christian Manhart)代表は、AFPの取材に「カトマンズ、パタン、バクタプルにそれぞれあるダルバール広場に甚大な被害が出たと理解している」「複数の寺院が倒壊し、パタンでは寺院2か所が全壊した。最も被害が大きかったのは(カトマンズの)ダルバール広場だ」と述べた。

 マンハート代表によれば、カトマンズの西方およそ280キロにあるユネスコの世界遺産で、ブッダ生誕の地とされるルンビニ(Lumbini)についても、被害状況を確認しているという。

 インド・マドラス大学(University of Madras)のP・D・バラジ(P.D. Balaji)歴史・考古学部長は、文化財の被災状況を映像で確認し、これらの歴史的な遺跡が完全に再建される可能性は低いと指摘。「ネパールと世界にとって取り返しのつかない損失だ」「被害が大きすぎて、完全修復は不可能だろう」と述べた。(c)AFP/Paavan MATHEMA