【4月24日 AFP】米政府が23日、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の人質となっていた2人を無人機攻撃によって誤って死亡させたと認めたことで、米国による「標的殺害」の限界と危険性を問題視する声が上がっている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は2009年の就任以来、パキスタンの部族地域やソマリア、イエメンでアルカイダ幹部などのイスラム過激派を追い詰めるため、無人機攻撃に大きく依存してきた。

 だが、1月に行われた無人機攻撃で米当局は、米国人援助活動家のウォーレン・ワインスティーン(Warren Weinstein)氏(73)とイタリア人道活動家のジョバンニ・ロポルト(Giovanni Lo Porto)氏(39)がアルカイダ戦闘員と同じ建物内にいたことを全く把握していなかった。

 また米当局は、同時期にあった別の無人機攻撃で、アルカイダの米国人メンバー2人を意図せずに殺害。ホワイトハウス(White House)は、情報収集が不足していたことを認めた。

 米ランド研究所(RAND Corporation)の元米軍特殊部隊担当顧問で特別研究員のセス・ジョーンズ(Seth Jones)氏は、「これにより無人機の有効性についての議論がさらに強まるだろう」と指摘している。

 人権団体や一部議員らは、これまでに推定数千人の民間人が犠牲となっているとされる米国の無人機作戦の合法性や倫理性を長く問題視してきた。また、軍事問題の専門家らは、過激派組織に対する無人機攻撃の根本的な効果について、疑問を投げかけている。

 ジョーンズ氏はAFPの取材に対し、「無人機攻撃の使用に関する懸念がさらに強まった」「世界のテロ組織で、これまで無人機により敗北したものはない」と述べた。

 悲劇的な結果となった1月の無人機攻撃について、ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)大統領報道官は記者団に対し、アルカイダの戦闘員の存在と民間人に危険が及ばないことが「ほぼ確実」であることを条件としている新規則に従って実施されたと説明。だが、民間人に被害が及ばないだろうというその「ほぼ確実な評価」が誤りだったことが分かり、「この悲劇的で意図されていなかった結果」につながったと釈明した。

 無人機作戦を強く批判している米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のミカ・ゼンコー(Micah Zenko)特別研究員は、人質2人が死亡した今回の攻撃で、ホワイトハウスは自らの規則に違反し、施設を「擬人化」してアルカイダ幹部と同一視したと非難。今回の事案は「無人機攻撃に適用されている『ほぼ確実』の原則に疑問を投げかけるものだ」と述べた。(c)AFP/Dan De Luce