【4月24日 AFP】欧州でのより良い生活を求めて地中海(Mediterranean Sea)で遭難死する難民が急増している問題で、欧州連合(EU)首脳らは23日、ベルギー・ブリュッセル(Brussels)で開いた緊急会議で、同海域での捜索・救助作戦の予算を3倍に増やすことで合意した。

 過去最多の750人以上が死亡したとみられる19日の難民船転覆事故を受けた会議に臨んだEU首脳らはさらに、密航業者らに対する軍事行動の実施に向け前進した。

 欧州理事会(European Council)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)常任議長(EU大統領)は、EU首脳らがフェデリカ・モゲリーニ(Federica Mogherini)外交安全保障上級代表に対し、「密航業者らの船舶を、使用される前に拿捕(だほ)して破壊するための行動を提案する」よう指示したと発表。またフランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は、密航業者らの船を破壊していくための国連(UN)決議を、同国が独自に求めていく考えを示した。

 しかし首脳らは、欧州入りした難民らへの対応というデリケートな課題への具体策をまとめるには至らなかった。ジャンクロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)欧州委員長は会議後の記者会見で、「もっと踏み込めるのではないかと期待したが、実現しなかった」と明かした。

■「5000人の再定住地では足りない」

 トゥスク氏は、地中海におけるEU国境管理作戦「トリトン(Triton)」向けの捜索・救助作戦の予算を3倍にすれば「作戦能力の向上につながるだろう」という見方を示している。トリトンの予算は、これまでの月300万ユーロ(約3億9000万円)から900万ユーロ(約11億6000万円)へ引き上げられることになる。

 一方でトゥスク氏は、トリトンが従来の展開範囲である欧州南岸から30カイリの範囲内で継続されることも発表した。これは多くの難民が出港するリビアなどの国々からは遠く離れた海域だ。

 さらに再定住化問題については、首脳会議開催前にAFPが入手した草案ではEU加盟国が難民5000人に再定住地を提供するという記述が見られたが、会議後の正式文書には具体的な数は盛り込まれなかった。ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は会議後、「きょうは数を確定させなかった。5000人分では足りないという考えからだ」と語った。

 この問題についてさらに協議するため、EUとアフリカ連合(African Union)の関係者らが近くマルタで会議を開くことが決まった。マルタはイタリアやギリシャ同様、難民の到着数が最も多い国の一つとなっている。(c)AFP/Marianne BARRIAUX with Angus MACKINNON in Rome