【4月22日 AFP】アフリカ沖インド洋(Indian Ocean)の島しょ国コモロで、イブラヒム・バカール(Ibrahim Bacar)さんが摘んでいるのはイランイラン(Ylang ylang )の花だ。エキゾチックな芳香を漂わせる黄色い花を原料とした精油が、世界で最も有名な香水の一つである「シャネル(Chanel)N°5」をはじめ、さまざまな香水に特徴的なフレグランスをもたらしている。

 コモロは世界1位のイランイラン精油生産国で、同国輸出収入の1割をこの精油が占める。

 だがイランイラン栽培農園は数十年も開発がなされないままで、重労働を嫌って花の摘み手は少なくなり、さらに森林伐採も進んで、同国のイランイラン栽培に危機が訪れている。

 フィリピンが原産のイランイランは、タガログ語で「花のなかの花」という意味だという。

 1921年、「女性の香り」を備えた花を求めていたココ・シャネル(Coco Chanel)がたどりついたのがイランイランだった。こうしてイランイランを原料の一つとした「シャネルN°5」が誕生した。

 シャネルで香水の研究開発部門を担当するクリストファー・シェルドレイク(Christopher Sheldrake)氏によれば、「N°5」の特徴は「非常に抽象的」な香りにあるという。

「N°5」に用いられるイランイランの精油は原料の10%を占めることから、シャネルはコモロ産イランイラン精油の最大購入企業の一つだ。

 シャネルは、コモロのイランイラン栽培農園における労働環境向上と公正な賃金確保に取り組むとしている。(c)AFP/Claudine RENAUD