【4月21日 AFP】自閉症の子どもを持つフランス人の母親が、異なる言語を話す、または言葉が全く話せない相手との意思疎通を可能にするスマートフォン(多機能携帯電話)用アプリを開発した。仏IT企業ソジェティ(Sogeti)が20日、発表した。同様のものとしては世界初とみられるという。

 マリー・スピッツ(Marie Spitz)さんが開発したのは、「トーク・ディファレント(Talk Different)」と呼ばれるアプリ。700種類の画像、色、アイコン、音声を用いてメッセージが作成できる。これは、重度の自閉症のために言語能力が制限されている娘のポーリン(Pauline)さんと会話するためにスピッツさんが実践している代替意思伝達手段に基づくものだという。

 スピッツさんによると、同アプリ開発のカギは、道に迷った旅行者や、発話および聴覚障害がある人など、言語的に孤立している利用者が、誰でも理解できるようなメッセージをスマートフォンやタブレット端末上で構築できるようにする「手軽さと使いやすさ」だという。

 世界9種類の言語に対応した「トーク・ディファレント」アプリは、仏ITコンサルティング大手キャップジェミニ(Capgemini)傘下のソジェティによってオンラインストアのグーグルプレイ(Google Play)とアップルストア(Apple Store)で入手可能となっている。価格は150円。

 スピッツさんによると、同アプリの絵本のようなシンプルさは、娘と意思疎通を図る際に使用していた複雑で当惑するようなツール類とは正反対のものにしようと意図した結果だという。

「障害者補助における費用や訓練の必要性、過度の特異性は、補助の利用を困難にし、障害のある人々を結果的に孤立化させてしまっている」とスピッツさんは指摘。「3年以上を費やして取り組んできたこのプロジェクトの目標は、トーク・ディファレントを安価で提供することと、誰でも簡単に使えるようにすることだった。このアプリには特別な訓練は不要なのです」と続けた。

 アプリ利用者は、さまざまな種類の人物、場面、感情、思考などの画像や写真を選択し、色や音声、文字などと組み合わせて、容易に認識可能なメッセージや質問を構築できる。

 ソジェティのプロジェクト責任者、パトリック・マルケ(Patrick Marquet)氏は「トーク・ディファレントは、直感的に理解可能で、楽しみながら日常のコミュニケーションをより簡単なものにすることができる。マリー・スピッツさんはその並外れた構想力と意欲で、話す言語が必ずしも同じでない人々や、さまざまな障害のある人々のための、新しいコミュニケーションツールを考案した」とコメントしている。

 スピッツさんによると、現在は、医療従事者や障害者向けに特化したアプリの開発を進めているという。(c)AFP