【4月17日 AFP】犬との愛の秘密は、瞳の中に──。犬と人間が互いの目を見つめ合うことで、双方に「愛情ホルモン」であるオキシトシンの分泌が促進されるとの研究論文を16日、麻布大学(Azabu University)動物応用科学科の菊水健史(Takefumi Kikusui)氏率いるチームが米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。

 これまでの研究では、母親が赤ちゃんの目を見つめることで、オキシトシン生成が促進され、愛情、保護、親近感などの感情がわき上がることが分かっていた。論文は、犬と人間がアイコンタクトを通じ、信頼と感情面の結びつきを育むオキシトシンの分泌を高め、数百年にわたり共に進化して親密になった可能性を示唆している。

 犬が野生のオオカミから進化して、人に慣れるペットや友達になった理由は、これと同じ仕組みが働いているからだと研究チームは指摘。「犬は、それぞれ犬と人間に最も近い近縁種のオオカミとチンパンジーに比べて、人間の社会的コミュニケーション行動を利用するのが上手だ」と述べている。

 研究チームは、犬と飼い主を対象に、語りかけ、触れ合い、見つめ合いなどの交流を30分間にわたり記録する実験を行った。実験後、犬と飼い主の尿中のオキシトシン濃度を測定した結果「犬と飼い主の間のアイコンタクト回数が増加すると、双方の脳内オキシトシン濃度が上昇した」という。

 オオカミを使った同じ実験では、犬で観察された結果は得られなかった。このことは、数百年前に犬がオオカミから進化した中で、家畜化された犬は、人間の社会的コミュニケーションの要を成す「まなざし」の力を身につけることができたことを示唆している。(c)AFP