【4月13日 AFP】仏パリ(Paris)で開催されている映画祭「Audiovision Film Festival」──この目の不自由な人のための映画祭では、ローカルネットワークに接続されたヘッドフォンで、ストーリーの詳細を聞きながら作品を楽しめるようになっている。

 映画祭初日に上映された映画は、先史時代の進化論をやゆするフランスのコメディー系アニメだった。「翼竜が空から舞い降りてきて、エドワールの頭をつついて攻撃した!」──映画のシーンに合わせて、このようなナレーションがヘッドフォンに流れる。

 上映後の観客との座談会で司会を務めたのは、ラジオ・パーソナリティーのベンジャミン・マウロ(Benjamin Mauro)さん。自身も先天性の視覚障害があり「音声解説がなかったら、映画を理解できなかった」と話した。この意見には映画を楽しんだ子どもたちの多くも賛同し、音声解説はとても役に立ったと声を上げた。ただ、一部の子どもたちは、会話と背景の音をつなぎ合わせて映画の内容を理解することに慣れているとして、音声解説は必要ないとの意見も聞かれた。

 マウロさんによると、音声解説を聴きやすくするために、ヘッドフォンの音量を映画のサウンドトラックよりも上げる必要があるなど、システムはまだ完全なものではないという。また、アニメだと話の展開が非常に速いため、音声解説を入れる余地がほとんどなく、別の種類の映画では視覚的に醸し出される雰囲気を言葉でどう表現するかなど、課題はまだまだ多いという。

 映画祭の主催者は、音声解説システムは着実に進歩していると説明するが、主催者の一人で、視覚障害者教育の普及に取り組むバランタン・アユイ(Valentine Huy)協会のオリビエ・ジョー・ジョセリニエ(Olivier Jaud de La Jousseliniere)さんは、「残念ながら、開発はまだ十分でない」と話す。

 2014年にフランスで上映された映画で音声解説の付いたものは16%、音声解説の設備が整った映画館は2%未満にとどまった。

 音声解説システムは発展途上だが、それでも映画を観た子どもたちからはおおむね好評だった。目の不自由な少女で同日の映画を楽しんだマーゴット(Margot)さんは「これからも続けて。ブラボー!」と述べ、映画祭の関係者を勇気づけた。(c)AFP/Marc BURLEIGH