■「これで終わりだ」

 アイギュンさんは、やって来る守衛に襲い掛かろうと考えた。そうすれば、刀ではなく銃弾で殺されると思ったからだ。だが3日待っても、誰も現れなかった。「静寂と孤独感、不安で発狂しそうだったが、神の力のおかげで正気を保つことができた。死を待つことは最悪の拷問だった」

 ついに3日目、守衛らがやって来て、ダイが戦闘で死亡したことと、アイギュンさんの刑執行は自分たちが行うことを伝えられた。守衛らはダイの遺体を見せ、アイギュンさんにその体にキスをして、臭いをかがせるよう命じると、アイギュンさんも「殉教」すれば同じ臭いがするだろうと言った。

 その後のある日、アイギュンさんが拘束されていた建物に武装集団がなだれ込んできた。「私はこうつぶやいた。『これで終わりだ。彼らは私を外に連れ出し、首をはねるのだ』と」

 だが、IS戦闘員は現れず、アイギュンさんは3日間、また取り残され、このまま飢え死にさせられるのかと思った。その後のある夜、アイギュンさんはISと敵対する集団によって解放され、トルコへ戻ることができた。

「本の執筆は、とてもつらい作業だった。同じ感情を再び味わわなければならなかった。だが、書き終えると、気持ちがとても楽になった」(アイギュンさん)

 アイギュンさんによると、拘束されている間、殴打や拷問を受けた他、最も極端な場合では、絞首刑に処される直前の人質らの前で食事をとることを強要されたこともあったという。

 アイギュンさんは、療養期間を経た後、現在ではミリエト紙での仕事に復帰している。(c)AFP/Dilay GUNDOGAN