■世銀とADBでは賄えないアジアの開発資金

 各国の参加を募るに当たり、中国はAIIBの意思決定において拒否権を放棄する方針を示したと報じられている。

 だが、特有の汚職体質を抱える中国共産党が主導するAIIBには、透明性をめぐって根強い懸念が残る。また、中国がAIIBを利用して自国の地政学的・経済的利益の拡大を図るのではないかと警戒する声も聞かれる。

 アジアでは今後、輸送や電力、通信などの大型インフラ投資の需要が高まる。アジア開発銀行(Asian Development BankADB)の試算によれば、2010~20年のアジアへのインフラ投資額は推定8兆ドル(約960兆円)で、日米が主導する世界銀行(World Bank)とADBの資金だけでは賄いきれない。

 中国は、AIIB設立に隠された利己的な動機はないと主張する。史耀斌(Shi Yaobin)財政次官は、声明で「AIIBは互恵的な構想であり、既存の国際経済秩序を補完するものだ」と説明。「開放的かつ高い透明性と効率性」を約束した。

 だが、AIIBには世銀やADBの役割を奪う可能性もある。米国と日本はガバナンス(統治)や融資基準に関する懸念から、これまでのところAIIBへの参加を見送っている。

 最終的には、中国政府も西側諸国の積極的な協力が必要になると認識していると指摘する専門家もいる。(c)AFP/Kelly OLSEN