昨年パラオを訪れた観光客は14万1000人弱。中国本土からの観光客のおかげで2013年より34%増えた。今年2月の中国人観光客は1万955人と、前年同期比で500%以上の伸びを見せた。パラオの国内総生産(GDP)のほぼ85%を観光業が占めているため、中国からの観光客は経済効果をもたらす一方、長期的な悪影響を懸念する声も上がっている。

 パラオ政府観光局のナナエ・シンゲオ(Nanae Singeo)氏は「このような突然の増加は前例のないことで、私たちはまだ状況をつかみきれていない」と述べた。

 これまで世界からパラオを訪れる観光客の7割はダイビング目的で、日本人、台湾人、韓国人の順に多かった。だが最近増えている中国人観光客の大多数はダイビングよりもビーチでゆったり過ごすことを目的としているようだ。

「観光客の増加に見合った経済成長がない」とシンゲオ氏は言う。「観光客は34%増加しているのだから、30%程度の経済効果があるはずなのに、それが起きていない」

 コロールでは、騒がしいとか環境に優しくないとして中国人を批判する声も上がっている。ノーマンさんというタクシー運転手は「中国人観光客はサンゴを破壊し、海にごみを捨てる」と話した。中国人がウミガメを乱暴に扱っている写真が出回って問題になったほか、観光客が泳ぎながら大量のクラゲを見ることができる塩水湖ジェリーフィッシュレイク(Jellyfish Lake)のクラゲが中国人のせいで死んだという指摘もある。

 押し寄せる中国人の波を押しとどめようとしているパラオ政府は今年3月、中国からのチャーター便の本数を今年4月は半分にすると発表した。トミー・レメンゲサウ(Tommy Remengesau)大統領は、観光業が特定の国に依存してしまうことを防ぐための政策であって、特定の国の人を差別するものではないと述べた。

 レメンゲサウ大統領は「われわれは成長をコントロールしたいのか、それとも成長にコントロールされたいのか、ということだ」と記者団に語った。「指導者としてこの状態をそのままにしておくのは無責任だろう。私は現在だけを見ているのではなく、指導者として将来のことも考えている」

 だが、中国市場向けのサービスを提供しているホテルやレストラン、ガイドの数を見る限り、世界第2位の経済大国からパラオにやって来る観光客の流れは続きそうだ。(c)AFP/Sébastien BLANC