■携帯端末での利用が次の課題

「麻酔ウェブ」は27言語で読むことができる。また、より幼い子供のためのインタラクティブなコンテンツは、スウェーデン語、英語、スペイン語、アラビア語で利用可能だ。内容はすべて医師のチェックを受けている。2006年にこうしたサービスの初の試みとして始まり、今では月に1万5000人の閲覧がある。大半はスウェーデン国内からの利用だが、国外からもアクセスがある。

「麻酔ウェブ」を考案したのは、ストックホルム市にあるアストリッド・リンドグレーン小児病院(Astrid Lindgren Children's Hospital)の麻酔看護師グニラ・ルーフさんだ。病気の子供たちとその親が心の準備ができるように何かが必要だと感じたからだ。「不安を抱えた親と子供がたくさんいたが、私には彼らを安心させるための時間がなかった。そんな状況を変えなければいけないと思った」とルーフさんはいう。「子供たちに伝えるためには、彼らがいる場所へ行く必要がある。それが、インターネットだった」

 最大の課題は、どの年齢の子供にも関心を持たせるために、どのような見せ方にすれば良いかだった。「一番難しかったのは、思春期の子供たち。10~18歳の子供10人の意見を聞きながら、彼らの経験をもとにサイトを開発した」。10代の子供たち向けにはブログやチャットフォーラムといった機能も加えた。

 サイトを維持する資金が乏しい中で、ルーフさんは約10年間、「麻酔ウェブ」をボランティアで更新し続けている。子供たちがパソコンよりも、タブレット端末やスマートフォンを多用するようになり「麻酔ウェブ」は時代遅れになるのではないかと危惧する声もある。「良いツールだが、もっと(インタラクティブな)やりとりが必要だし、とりわけ携帯電話やタブレットでも利用できるようにしないといけない」と同病院小児麻酔科のペールアルネ・ラングビスト(Per-Arne Loennqvist)教授はいう。「そうでないと、多くの子供たちに届かなくなる可能性がある」

 それでもフェリシアさんの世代の子供にとって「麻酔ウェブ」はいつまでも忘れない強い印象を残している。「思うように手術できた感じがした」とフェリシアさんは語った。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT