【3月27日 AFP】抗生物質が効かない超強力細菌「スーパーバグ」への感染により、中国では2050年までに年間100万人が死亡、20兆ドル(約2400兆円)の経済的損失が発生する──英国政府委託の抗生物質耐性に関する調査の結果が26日に発表された。

 この調査を率いたのは、米投資銀行大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の元チーフエコノミスト、ジム・オニール(Jim O'Neill)氏。2016年に開催される20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)の議長国として、抗菌薬耐性(AMR)に関する議論を中国が「主導」すべきと述べる。

 同氏は、「宗教、皮膚の色、人種などに関わらず発生する問題がここにある」と指摘し、「イスラム教のスンニ派(Sunni)であろうとシーア(Shiite)派であろうと、何らかの手だてが講じられなければ、(誰でも)AMRで死ぬことになる」と続けた。

 同投資銀行で資産運用部門を統括していたオニール氏によると、AMRの脅威によって「中国の過去10年間における顕著な経済実績と未来の大きな可能性」は危機にさらされるという。「薬剤耐性菌感染症が原因で、2050年までに中国経済は20兆ドル(約2400兆円)の損失が発生する。そして、さらに衝撃的なことは、年間の死者が100万人増えることだ」と話した。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相が2014年に発表した抗菌薬耐性に関する調査結果では、薬剤耐性菌への感染により、2050年までに世界の国内総生産(GDP)が2~3.5%減少する他、世界で年間1000万人が死亡する恐れがあるとされた。2番目に大きな死亡要因であるがんでは、2050年までに年間約820万人が死亡すると推計されている。

 中国では近年、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory SyndromeSARS)や、さまざまな種類の鳥インフルエンザの人への感染流行など、新しい病気に関するニュースが複数出ている。

 中国国営の医療環境をめぐっては、抗生物質の売上が医療機関の収入源として大きな部分を占めているとして、中央政府はこれまでにも厳しい批判にさらされてきた。専門家らは、同システムで支払われるインセンティブ目当てに不要な抗生物質の処方が行われていることが、薬剤耐性の問題を悪化させる原因と指摘している。

 ブラジル、ロシア、インド、中国の世界新興4か国の頭文字を取った造語「BRIC」を作ったことで知られるオニール氏は、この問題を「医師らへの報酬の支払い方について、改善策を検討する必要がある」と記者団に述べた。(c)AFP