【3月25日 AFP】欧州航空市場で大きなシェアを占めるようになった格安航空はすべて統一された安全・保守基準に従っており、これまでほとんど事故が起きたことはないと専門家らは述べている。

 フランス・アルプス(French Alps)に24日墜落し、乗客乗員150人全員が死亡したドイツ航空大手ルフトハンザ航空(Lufthansa)傘下の格安航空会社ジャーマンウイングス(Germanwings)のエアバス(Airbus)A320型機、9525便の事故は、欧州で起きた格安航空会社(LCC)の事故としてはわずか2件目だ。これより前のLCC旅客機の事故は、2005年にギリシャで乗客乗員121人が死亡したキプロス・ヘリオス(Helios)航空の事故。

 コンサルティング会社、アーチェリー・ストラテジー・コンサルティング(Archery Strategy Consulting)の航空輸送の専門家、ベルトラン・ムリーエグロ(Bertrand Mouly-Aigrot)氏によると、欧州では1990年代初めの航空規制緩和を受けて、中距離便の30~40%をLCCが占めるようになっている。ルフトハンザ航空でも、フランクフルト(Frankfurt)とミュンヘン(Munich)のドイツ2大空港の発着便を除く中距離便は、傘下のジャーマンウイングスへ移行させており、スペインのバルセロナ(Barcelona)からドイツのデュッセルドルフ(Dusseldorf)へ向かっていた9525便もそうだった。

 原因はまだ明らかになっていないが、ジャーマンウイングスの旅客機が墜落するまで、欧州のLCCは安全記録を誇っており、それを売りにしていたくらいだ。

 アイルランドのライアンエア(Ryanair)や英イージージェット(easyJet)は、保有する機体が新しいことも誇りにしているが、これは経営戦略の一部でもあると航空安全の専門家、ザビエル・ティテルマン(Xavier Tytelman)氏はいう。新しい機体はより効率的で、燃料コスト的に優位なだけでなく、メンテナンス費用も抑えられる。旅客機は4~5年に一度、徹底的な分解検査(オーバーホール)が必要だが、LCCはそうした維持費をかける代わりに、保有機が老朽化する前に売却してしまうと同氏は説明する。

 しかし、墜落したジャーマンウイングス9525便の機体は、親会社ルフトハンザで運航していたエアバスA320型機で、就航から24年が経っていた。つまり「比較的古く、おそらくあと数年で商業用飛行は終わりというところだっただろう」とムリーエグロ氏は語る。ただし「古い機体を商業飛行から引退させるというのは、経済的な問題であって、安全面の問題からではない。古い機体は単にコストが高くつき非効率的だからだ」と同氏は指摘する。

 格安航空でも従来の航空会社でも、航空機は同じ整備規定の対象となっている。ティテルマン氏は「格安というのは、比較して快適性を譲っているということで、安全性が低いという意味ではない」と強調する。格安航空会社が低価格の搭乗券を提供できているのは、フライト中の食事などのサービスをなくしたり有料化したり、地上スタッフを減らすといった他のコスト面を抑えているからだ。

 欧州の航空業界でジャーマンウイングスは非常に評判が高いと、2人の専門家は口をそろえる。「(ジャーマンウイングスは)欧州のトップ航空グループ、ルフトハンザの子会社であり、ルフトハンザといえば信頼できると評判であり、また世界中の多数の航空機の保守整備を行っている最大級のメンテナンス会社、ルフトハンザ・テクニーク(Lufthansa Technik)も所有している」とムリーエグロ氏は付け加えている。(c)AFP/Tangi QUEMENER