■果てしない紛争の地

 2日目、戦闘機のパイロットがイラクでの初めての任務について話してくれた。ただし仮名を条件にだ。このような作戦については、本名を明かさないという厳しいルールがある。以前、作戦に参加したリビアやアフガニスタンとは違う、新しい環境での挑戦だったという。ヨルダン人パイロットがイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」によって焼殺された映像は、自分たちにも大きな傷を残したと語った。だが一方で、その映像は彼の使命感をさらに強めたという。

 パイロットは専用のカーキ色のスーツを着ているため、すぐに分かる。空母の中でまるで違う階級に属しているかのようだ。遠くを見るような目つきをしているが、大抵の場合、ものすごく集中している。そして彼らは任務が終われば、どうやって地上に戻ってくるかを知っている。

 階級の高い将校たちは、自分たちだけの専用食堂をもっている。だが、ピエール・バンディエ(Pierre Vandier)艦長(47)が、部下たちと気さくにしゃべっている姿はよく見かけた。彼は戦闘機ラファールのパイロット、リビアやマリでの作戦の指揮官などを経て今、シャルル・ド・ゴールにいる。

 5日も経つと空母での生活にも慣れていた。陸に戻る日には懐かしささえ覚え、胸が熱くなった。世界で最も魅力的な地域でありながら、北はイラクから、私たちの港の方角ではサウジアラビア、右舷の方角ではイランまで、紛争の絶えないペルシャ湾を、私は離れようとしていた。

 グレイハウンドがエンジンをふかして飛び立とうとしたとき、デッキの上の技術者たちが「バイバイ」という仕草で手を振った。離陸のシグナルだ。グレイハウンドは一瞬にして(容赦なく)上空に。私たち乗客はシートにしがみつくしかなかった。だが、米軍の将校はもう、シャルル・ド・ゴールから持ってきたパンを取り出していた。「フランスのバゲットだ。食べてみろ。すごくおいしいぞ!」。彼は同僚に冗談めかして勧めながら、陸に持ち帰る「戦利品」に上機嫌だった。(c)AFP/Valerie Leroux


※この記事は、AFPのバレリー・ルルー記者(パリ駐在)のコラムを翻訳したものです。