■工事現場に囲まれて数十年

 ウエストミンスター(Westminster)地区にある上品なオーム広場(Orme Square)では先日、下水道が破損する事故が起きた。事故現場の上を走る道路では、ある有名なテレビ司会者の自宅から運び出された土を積載したトラックが行き交っていた。地元育ちだという近隣住民2人は、匿名で取材に応じ、下水道の破損とトラックの関連性は明白だといらついた様子で語った。

「この何十年もの間、建築現場に囲まれた暮らしに直面させられている」。同地区では工事が行われていない道路を見つけるのが難しいほどで、近所の人々と顔を合わせれば、すぐにこの話題になるという。騒音、駐車規制、進入禁止、粉じんなど、工事がもたらす不便は枚挙にいとまがない。

 ロンドンでは2014年、ケンジントン・アンド・チェルシー地区で初めて地下の増築に関する規制が制定された。増築は地下1階に限定し、広さは敷地面積の50%を超えてはならないというものだ。規制制定に携わったティモシー・コールリッジ(Timothy Coleridge)元区長(保守党)は、「全地元住民が参加する大規模な協議を行い、地下室の増築は禁止すべきではないが、規制は行うべきだという見解に至った」と説明した。

 激怒していた最も強硬派の住民たちも、地下室増築を全面的に禁止すれば、自宅の資産価値が下がるかもしれないと知って納得したという。

「私は保守党だから、通常はこうした資産への規制を行いたいと思わない。だが、これだけ隣接して暮らしている中では、公正であるために制限が必要だ」とコールリッジ氏は話した。(c)AFP/Jessica BERTHEREAU