■怒りに満ちて

 ハウワ・モハメド(Hauwa Mohammed)さんは、ナイジェリア北東部ヨベ(Yobe)州カタルコ(Katarko)村でボコ・ハラムに拉致され、2週間後の今年1月23日に解放された人質158人の1人だ。モハメドさんはAFPに対して「(ボコ・ハラムに対する)激しい怒りと憎しみでいっぱいだった」と拘束期間を振り返り、同じく拉致された3人の娘たちが何をされるか気がかりだったと語った。人質になると、ボコ・ハラムに忠誠を誓うことを必ず強制されるためだ。

 モハメドさんは、解放された理由は分からないとする一方、自分たちよりはるかに不運な人々は無数にいると指摘し、「(ボコ・ハラムに)拘束されている女性全員が、恐怖の経験から解放されるよう祈っている」と述べた。

■求められる格差克服への取り組み

 09年以来1万3000人以上の死者が出たナイジェリア北部のボコ・ハラムの襲撃は、貧しいこの地域における深刻なジェンダー格差などの社会的危機も浮き彫りにした。同国の人口1億7300万人の約半数は、イスラム教徒が多数を占める北部に暮らしている。英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシル(British Council)の12年の調査リポートによれば、ナイジェリア北部で中等教育を修了した女性の割合は、ボコ・ハラムの襲撃で北東部各地の学校が閉鎖に追い込まれる前の時点で3%にとどまっていた。15~19歳の少女の非識字率についても、キリスト教徒が多数派の南部では10%未満だったのに対し、北部では3分の2以上に上った。

 専門家の多くは、ナイジェリアが軍事力でボコ・ハラムを封じ込めるだけではなく、北部の発展を促進し、ボコ・ハラムの過激で暴力的な思想を拒否する力を男女を問わず身に付けさせる積極的な対策に取り組むことも必要との意見で一致している。

 冒頭のサミュエルさんの娘サラさんは昨年12月、拘束状態のまま18歳の誕生日を迎えた。ボコ・ハラム指導者アブバカル・シェカウ(Abubakar Shekau)容疑者は拘束している少女たちを「奴隷」として売り飛ばし「強制結婚させる」と明言しており、サラさんも望まない結婚を強いられた可能性がある。

「つらい」とサミュエルさんは率直に語った。「わたしたちを救えるのは神だけです」(c)AFP/Coumba SYLLA