【3月19日 AFP】外国人観光客らが多数死傷した博物館襲撃事件が起きたチュニジアは、人々が近づくことが困難な内陸部に潜む武装勢力、政情混乱が続くリビアと間に広がる管理不能な国境地域、そしてシリアでの戦闘に参加した後に戻ってきた数千人の若者たちといった要因から、イスラム過激派にとって格好の標的となっている。

 首都チュニス(Tunis)の国立博物館で18日に発生し、日本人を含む観光客17人が死亡した襲撃事件については今のところ、いずれの過激派組織も犯行声明を出していない。しかし、過激派は数か月前から当局に対する脅しを強め、同国にとって大きな収入源となっている観光業を攻撃すると警告していた。

「アラブの春(Arab Spring)」につながった2011年の革命運動以来、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に忠誠を誓う「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic MaghrebAQIM)」や「イスラム国(Islamic StateIS)」などのイスラム過激派組織は、アルジェリアとの国境に近い山岳地帯に身を隠してきた。

 チュニジア軍はこれら組織の解体を試みてきたが、いずれも失敗。その過程で、シャアンビ(Chaambi)地域などで多数の兵士を失った。

 互いに反目する民兵組織(一部はISへの忠誠を表明している)の勢力争いが続いている隣国リビアの混乱もまた、砂漠地帯にある長い国境が管理不能状態にあることなどから、チュニジアにとって大きな打撃となっている。

 国境に近い一部地域では、リビアとの間の密輸が唯一の収入源となっていることから、国境の封鎖は事実上不可能だ。「チュニジアン・オブザーバトリー・オブ・グローバル・セキュリティー(Tunisian Observatory of Global Security)」のジャミル・サヤフ(Jamil Sayah)代表は、「地理的に近いことがリスクを高めているのは明らかだ」と指摘。周辺地域の全ての国に「国境周辺でのIS掃討に向けた共通の戦略」が必要だと話している。

 チュニジアはIS参加者の数が最も多い国とされており、2000~3000人の若者がシリアとイラクでの戦闘に参加するために出国したとみられている。チュニジア当局はさらに9000人の出国を阻止したと明らかにしているが、既に帰国したとみられる500人前後の監視に苦慮している。

 チュニジア人アナリストのサラヘディン・ジョルシ(Slaheddine Jourchi)氏は、国内の過激派組織が一つの戦略として、若者をシリアへ送り、チュニジア国内での戦闘に備え訓練を受けさせていると指摘している。(c)AFP/Michel MOUTOT