【3月11日 AFP】数十年前の米国で砂糖業界が、砂糖消費の減少を回避するために、虫歯対策を管轄していた政府研究機関に干渉していたことを示唆する調査結果が10日、医学誌「プロス・メディシン(PLOS Medicine)」に発表された。

 調査は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)の研究者らが、イリノイ大学(University of Illinois)内の公立図書館に保管されていた1960~70年代の業界関連文書319件を分析したもの。これらの文書から、30か国の団体が参加する砂糖業界組織が、すでに1950年の時点で、砂糖が虫歯の原因となる事実を把握していたことが明らかになった。

 しかし、米国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)は1969年まで、砂糖消費の削減について「理論的には可能」としながら、公衆衛生対策としては実用的でないと結論付けていた。砂糖業界の代表らは当時、米政府の研究機関であるNIHと、その他の虫歯予防対策の研究で緊密に協力していた。

 カリフォルニア大調査によると、砂糖業界は歯垢分解酵素や虫歯予防ワクチンの研究に出資し、当時の国立歯科研究所(National Institute of Dental ResearchNIDR)と関係を築いていた。砂糖業界専門家委員会と、NIHの虫歯予防対策の優先順位に影響力を持っていたNIDR委員会のメンバーは、1人を除いて全員同じ顔触れだったという。

 ニューヨーク(New York)州マンハセット(Manhasset)のノースショア大学病院(North Shore University Hospital)の歯科部長、ロナルド・ブラコフ(Ronald Burakoff)氏は、カリフォルニア大の調査結果から、砂糖の消費量への悪影響が出るのを抑えるため、業界が意図的に政府の虫歯政策を誘導した可能性がうかがえると指摘。「たばこ業界の喫煙の害否定と並んで憂慮すべき事態だ」と語った。

 調査結果に関するAFPの問い合わせに対し、NIDRの後継機関、米国立歯科・頭蓋顔面研究所(National Institute of Dental and Craniofacial ResearchNIDCR)からの回答は、これまでのところ得られていない。(c)AFP/Kerry SHERIDAN