【3月10日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中の1944年10月に東欧アルバニアの山中に墜落した爆撃機に乗っていた英空軍兵の結婚指輪が9日、70年ぶりに遺族のもとに戻った。

 この兵士は航空技師だったジョン・トンプソン(John Thompson)さん=当時(23)=。トンプソンさんを含む7人が乗っていたハリファックス(Halifax)爆撃機は、アルバニアの首都ティラナ(Tirana)の南東約60キロの山中に墜落し、乗っていた全員が行方不明になった。

 ティラナにあるアルバニア国防省で9日行われた指輪の引き渡し式典に出席したトンプソンさんの妹、ドロシー・ウェブスター(Dorothy Webster)さんには、トンプソンさんの結婚指輪と、墜落現場にあった小さな石、機体の残骸の一部を入れた小さな箱が手渡された。ドロシーさんは涙ながらに「今日、兄が返ってきました」と語った。

 トンプソンさんのおい、アラン・ウェブスター(Alan Webster)さん(63)は、「私たちは、彼がリビアかイタリアで任務に就いていたということしか知りませんでした。花嫁を親族に紹介して間もなく出征したんです」と話した。トンプソンさんの妻ジョイス(Joyce)さんは、トンプソンさんが行方不明になった2年後に再婚し、1990年代に70歳で亡くなった。トンプソンさんは、結婚のわずか6か月後に行方不明になった。

 爆撃機とその乗組員の運命が明らかになったのは1960年の夏。墜落現場に近い村に住むヤホ・ツァラ(Jaho Cala)さんがまき割りをしていたところ、1本の指と指輪を見つけた。指輪には「J&J」というイニシャルがあった。

 ヤホさんの息子ジェミル・ツァラ(Xhemil Cala)さん(63)はAFPに対し、「さらに少し先に行くと飛行機のものとみられる部品がいくつか落ちていたのですが、独裁時代だったこともあり、そのことについて父はあえて話をしなかったそうです」と語った。当時アルバニアはエンベル・ホッジャ(Enver Hoxha)首相の独裁下にあった。「父はこの指輪を大切に保管し、亡くなるとき私に、指輪の持ち主をさがしてくれと言ったのです」

 ジェミルさんは父の遺志に従って英国大使館に連絡。指輪の返還につながった。(c)AFP