大江編集長:今回の号が完成に近づくにつれ、あらためて感じたなかに日本の報道と世界の報道の温度差が挙げられるのですが、様々な国でジャーナリストとして活躍されてきたジュリアさんの経験からこれについてはどう感じていますか?

ジュリア:以前私は、マレーシアに住んでいたことがあるのですが、マレーシアはイスラム教の国で、政治家もそれらを政治活動に利用することが往々にしてあります。私個人の視点から意見するのは難しいですが、これについては常に議論されています。マレーシアやインドネシアから多くの人たちがISILに参加しているので、人々の意識は高いですね。ですから、一般的な問題として扱われる分、報道もうやむやにできません。

 AFPBB Newsでは、一方向の視点からだけではなく、さまざまな角度から取材した記事を翻訳、編集し配信しています。例えば、アメリカ人の中にはISILと闘うために中東に渡る人もいれば、イギリス人がISILに参加するため渡航する、という複数の視点による記事を掲載しています。そういったスタンスで報道するメディアは、少ないかもしれませんね。世の中の人は、以前ならイラクで起こっている出来事は、他人事として傍観していましたが、時代の流れとともに、報道のあり方も変化し、今では全世界に影響がある出来事として取り上げられるようになりました。

 

ジュリア:ところで、今後取り上げたい特集やテーマなどはありますか?

大江編集長:今回もう一方のテーマとして掲げたのは、イスラム世界がISILをどうしていくのかということでした。今号では、まだまだやりきれなかったので、そのあたりをもっと深く掘り下げたいです。キリスト教や仏教に比べれば、イスラム教は世俗との折り合いがつけにくいのかもしれません。

 中東が抱えてきた歴史、サイクス・ピコ協定から始まり石油の問題があり、アメリカがイラク戦争を起こし、こういった被害者としての歴史、恨みの連鎖があそこの地域に集中しているのも事実だと思います。ISILが生まれる土壌がそこにはあったのかもしれませんが、それをイスラム教の世界が前向きに統合していくことができるのかという点についても、非常に大きな関心を持っています。簡単にいうとイスラム教に宗教改革が起こるか。このあたりの話も今回の特集に盛り込みましたが、今後もWedgeで取り上げられればいいなと思っています。
 

 

ジュリア:最後になりましたが、どんな人にWedgeを読んでほしいですか?

大江編集長:大量の情報に囲まれている毎日の生活のなかで、新聞やテレビ、雑誌が報じるニュースや事件、そのほか様々な出来事に一通り目を通してすこしそれに飽きた、ニュースコンシャスな方にはぜひ一度手に取ってもらいたいですね。Wedgeは、他のメディアとは少し視点を変えてニュースや事件を取材し、記事にしています。今後も、世界でいま何が起きているのか、より興味をもっていただけるような特集やテーマを積極的に取り上げていきたいと思っています。
 

(終わり)