編集長インタビュー:雑誌「Wedge」の視点とは? 最新号「西欧とイスラム 原理主義の衝突」
2015年03月02日 20:00 発信地:東京/日本
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【3月2日】平成元年(1989年)創刊以来、常に情報の本質を見極め、時流やコマーシャリズムにもおもねらない骨太な提言で時代をリードする総合月刊誌「Wedge(ウェッジ)」は、国際情勢や産業動向、先端技術など、ワールドワイドな視点で時代の先端を切り取る。現在、東海道・山陽新幹線のグリーン車搭載誌として配布されるとともに、駅売店や書店でも販売されており、エグゼグティブリーダーやビジネスパーソンを中心とした読者層に支持されている。今回、AFPBB Newsのニュースディレクターを務めるジュリア・ザッペイが、Wedge編集長の大江紀洋氏に、最新号「西欧とイスラム 原理主義の衝突」について話を聞いた。
ジュリア:今月号で「西欧とイスラム」を選んだ理由と経緯を教えてください。
大江編集長:
我々日本人にとって、今年1月7日に起きたシャルリー・エブド襲撃テロ事件は非常に衝撃的でしたが、今回の事件でそれ以上に私たちが衝撃的だと感じたのはその後に起きたデモでした。史上最大規模の370万人もの人が集ったことに驚かされました。いままでも数多くのテロが世界中で起きましたが、今回はそれらとは全く異なる事件だということをひしひしと感じました。これほどの人たちが「私はシャルリー(Je suis Charlie)」といって集まり、訴えているという現実、そしてその意味を私たち日本人は理解できるのだろうか、と。編集部の中で何度も議論し、我々は何も分かっていないのではないか、というところから今回の特集がスタートしました。
その後、後藤健二さんと湯川遥菜さんの人質事件が起きました。日本の世論・報道の関心は圧倒的にその事件に向かっていきました。Wedgeとしての務めは、多くのメディアが見落としたり、素通りしてしまう事件の本質を、角度を変えた見方で掘り下げることですから、パリの事件をしっかり掘り下げることに私たちの存在意義があると考えました。
FRANCE, Paris : People take part on the Place de la Republique (Republic Square) in Paris in a Unity rally “Marche Republicaine” on January 11, 2015 in tribute to the 17 victims of a three-day killing spree by homegrown Islamists. The killings began on January 7 with an assault on the Charlie Hebdo satirical magazine in Paris that saw two brothers massacre 12 people including some of the country's best-known cartoonists, the killing of a policewoman and the storming of a Jewish supermarket on the eastern fringes of the capital which killed 4 local residents. AFP PHOTO / BERTRAND GUAY
ジュリア:これまでの号と違って、どのような点で苦労しましたか?
大江編集長:どこに焦点を合わせるのかがまず重要でした。表現の自由のテーマは我々がやるまでもなく、他のメディアが報じるだろうと思ったので、イスラム移民、ムスリムの問題を掘り下げたいと思いました。ムスリムがヨーロッパの人々にとってどういう存在で、今回のテーマにどうつながっていくのかを紐解きたかった。海外メディアの報道を常に情報収集しながら、ヨーロッパやムスリムの研究をされている有識者の方を探すというのが、最初の動きとなりました。
予想はしていましたが、一番苦労したのは、この分野の専門家の層が厚くなかったことです。その原因のひとつとして、日本とヨーロッパがお互いにかつてのような関心を持っていないことが挙げられると思います。このことは取材過程で多くの人に指摘されました。日本が経済的に成長している最中は、今より遥かにヨーロッパは日本に関心を持っていたし、ユーロ統合のときは日本の関心も高かった。しかしそれから数十年経った今、ヨーロッパの関心は、日本よりも中国にある。日本の関心もヨーロッパには注がれていませんよね。これは結構深刻な問題です。