【2月23日 AFP】世界で最も古い船の1隻である貨客船「MVリエンバ(MV Liemba)」はタンガニーカ湖(Lake Tanganyika)上を運航し、タンザニアのキゴマ(Kigoma)とザンビアのムプルング(Mpulungu)の間600キロを結んでいる。パイナップルやトウモロコシなどの農産物や最大600人までの乗客を運ぶ、湖周辺の住民にとって重要な交通手段だ。

 今から101年ほど前の1913年、この船はドイツ・パーペンブルク(Papenburg)で貨客船として建造された。当時の名前は「グラーフ・フォン・ゲッツェン(Graf von Gotzen)」。進水前に分解、5000個の箱に梱包され、当時ドイツの植民地であったタンザニアのダルエスサラーム(Dar es Salaam)に船で運ばれた。そこから鉄道でタンガニーカ湖畔に運ばれ、ふたたび組み立てられた。

 1915年にアフリカ東部戦線でドイツ軍の艦船として就役したが、1916年にイギリス軍の鹵獲(ろかく)を防ぐために当時の船長によって沈められている。

 戦後、ベルギー軍によって引き揚げられ、キゴマまでえい航されたが、嵐に遭いふたたび沈んだ。

 1921年、英国のウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)の命によって、イギリスによってふたたび引き揚げられた。何年もの間、湖の底に沈んでいたにもかかわらずこの船が使用可能だったのは、ドイツ軍の乗組員がふたたび航行することを願い、エンジンに保護グリースを塗ってから沈めたためとされている。

 1927年に「MVリエンバ」と改名。貨客船として就航した。1935年、セシル・スコット・フォレスター(C.S. Forester)がこの船と、タンガニーカ湖の戦いから着想を得て、「アフリカの女王(The African Queen)」を執筆。1951年には同名で映画化され、ハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart)とキャサリン・ヘプバーン(Katherine Hepburn)が出演した。

 老朽化したMVリエンバは常時メンテナンスを必要としており、新しい船に置き換えた方が安上がりなのかもしれない。それでも、ドイツ植民地時代の建物や鉄道と同様に保存すべきだという声も根強い。1970年代半ばには、元のエンジンをディーゼルエンジンに交換している。

 第1次世界大戦から100年あまりが過ぎた今も、MVリエンバは運航を続けている。(c)AFP