【2月12日 AFP】ポップコーンは大半の人にとって、映画を見ながら食べるスナック菓子に過ぎないかもしれないが、フランスの研究者チームにとって、それは解明されるのを待っている生体力学上の謎だった──。

 理工系エリート養成機関の仏エコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)の航空技術者、エマニュエル・ヴィロ(Emmanuel Virot)氏とアレクサンドル・ポノマレンコ(Alexandre Ponomarenko)氏の研究チームは、ポップコーンがポンと飛び上がる理由に関する実験結果をまとめた異色の研究論文を、11日の英国王立協会(British Royal Society)学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に発表した。

 研究チームは、トウモロコシの穀粒がはじけて中身が飛び出す際に何が起きるかを明らかにするために、毎秒2900フレームの録画が可能なカメラを利用した。

 実験の結果、温度が100度に達すると、穀粒内の水分の一部が水蒸気に変わり始め、約180度で圧力は海面気圧の10倍に等しい約1万ヘクトパスカルに到達した。

 圧力に耐えきれなくなった外殻がはじけて割れると、圧力が劇的に降下し、この作用で穀粒内のでんぷん質の中身が膨張して外に飛び出す。

 ヴィロ氏は「粒の大きさや形状に関係なく、臨界温度は約180度であることが分かった」と話す。

 割れた外殻から最初に飛び出すのは体肢のような形の構造体である「足」だ。これがフライパンの表面に接触し、熱を受けて圧縮され始める。

 圧縮が解放された足により、穀粒は数ミリから数センチのまで範囲の高さに跳ね上がり、水蒸気の突然の解放による「ポンという音」が発せられる。

 数ミリ秒後、内部から噴出する顆粒が膨張して、スポンジ状のフレークを形成する。

 外殻破裂からフレーク形成までの漸進的変化にかかる時間は、90ミリ秒(0.09秒)足らずだ。

 ポップコーンの跳躍は、単に閉じ込められたガスの爆風によるものではなく、熱力学と破壊力学の興味深い組み合わせに起因する現象なのだ。

「ポップコーン1粒は、ホウセンカなどの実がはじける植物と、人間などの筋肉で構成された動物との中間に位置づけられる特異な跳躍方法を有している」と研究チームは説明している。(c)AFP