■スイスでは「お尋ね者」、他国では「厚遇」

 データ売却計画が破たんした後、ファルチアニ容疑者は欧州の財務当局に接触し、盗んだ情報を渡し始めた。これが引き金となって多数の税務監査が行われた。

 この頃、スイス当局はデータ窃盗容疑でファルチアニ容疑者を指名手配中だったが、フランスとスペインはスイスへの身柄の引き渡しを拒否し、保護を申し出た。ファルチアニ容疑者はその申し入れを受けたが、12年にはスイス当局の要請で数か月間、スペイン国内で収監されている。その後、スペイン当局の脱税追跡を手伝う条件で釈放された。さらに昨年5月の欧州議会(European Parliament)選挙には、スペインの緊縮反対運動から発した政党「X党(Partido X)」の候補として出馬さえした。

 最近ではファルチアニ容疑者は、フランスの税務当局に科学的な専門知識を提供し、3500ユーロ(約47万円)の月額報酬を手にしている。給与を支払っているのは、ここ数年、彼が研究員として籍を置いているフランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)だ。13年7月のフランス上院議会で、ファルチアニ容疑者は自分の行動が「プライベートバンクにとって最も貴重な財産、つまり『彼らの評判』に対する脅威となっている」と語った。

 スイスの公共放送局RTSが放映した9日のインタビューでファルチアニ容疑者は、自分のような告発者を保護するために必要なことはもっとたくさんあり、それには財政的な援助も含まれると述べ「いい子ぶることはない。我々は生身の人間なんだ。単なる個人的な失望からくるエネルギーだけでできることじゃない」と語った。(c)AFP/Isabel Malsang