■勧誘される人たちのタイプ

 勧誘されてイスラム国に新規参入する者たちを、ハッサン氏らは6つのタイプに分類している。

 宗教的な動機に基づくのは、このうち2つだけだ。イスラム国の上層部を占める超過激派と、最近になってイスラム国の過激思想に傾倒した改宗者だ。

 その他に、金銭的・権力的に成功したいだけの日和見主義者、安定を求めイスラム国しか選択の余地がないと考えている現実主義者、さらに外国人戦闘員がいる。外国人戦闘員の動機は実に多様だが「大抵はイラクとシリアで起きていることについて重大な思い違いをしている」と指摘する。

 6つ目の、そしてイスラム国の新規参加者の中で最も重要なタイプは、欧米諸国で正当な評価を得られなかったことで、イスラム国の政治イデオロギーに引きつけられた人々だ。

 中東のスンニ派教徒の多くは、再び勢いを取り戻しているイランを先頭とするシーア派(Shiite)を脅威に感じている。「多くは倫理的な理由からISISには賛同しないが、ISISだけが自分たち(スンニ派)を守ってくれる力を持つ集団だと考えている」と、ハッサン氏は指摘した。

■米軍に学んだ組織づくり

 新著では、イスラム国は決して新しい集団ではなく、かつてイラクで活動していた過激派組織「イラク聖戦アルカイダ組織(Al-Qaeda in IraqAQI)」の残党が立ち上げたものだと強調している。

 2003年にイラクに進攻した米軍の最大の敵だったAQIは、米軍が地元部族の一部を取り込んで反アルカイダ(Al-Qaeda)の治安組織「覚醒評議会(Awakening)」を構成した戦略によって敗北した。ハッサン氏によると、イスラム国は当初からこの戦略に注目し、二の舞とならないよう、あらゆる手を打ったという。

「長期間潜伏する工作員集団を組織し、忠誠心を育て、コミュニティーを分断した。内部抵抗は事実上不可能になった。兄弟や親族と戦うことになるから、どの部族も彼らに敵対しない」

 著者らはまた、イスラム国はかつてイラクに君臨した独裁者サダム・フセイン(Saddam Hussein)の権力基盤バース党(Baathist)による復讐だとしている。新著によれば、 イスラム国の政策決定者の大半は、フセイン政権時代に軍や治安部隊に所属していた者たちだという。(c)AFP/Eric RANDOLPH