【2月16日 AFP】19歳の松尾清香(Sayaka Matsuo)さんは、畳の上に寝そべり、首と肩の凝りをほぐしている。しかし、そこにはリラックス効果を高めるヒーリング音楽やミスト器などは用意されていない。――松尾さんは、正面から激しく体をぶつけ合う日本の国技「相撲」の取り組みに備えているのだ。

 練習着の上に「まわし」を着け、構えの姿勢に入った松尾さんは、自分の体を倍以上も重い男子の体にぶつける。しかし、松尾さんは大きな体格差などものともせず、その決断力と技術で巨大な相手を土俵の外に追いやる。

 松尾さんはAFPに対し、「相撲は遊びで始めたんです。(父からは)たくさんの重圧を感じています。女子の世界相撲選手権で優勝することが私の目標です」と語った。

 元力士の佐田乃花(Sadanohana)の娘として、通常なら女性が土俵に上がることはできないスポーツの世界に足を踏み入れた松尾さんは、5歳から相撲を取っている。

 松尾さんは現在、小規模ながらも増加しつつある女子力士の一員として、日本最古の男性スポーツ社会で形勢逆転を狙っている。

■神道の伝統文化を継承する相撲

 東京大学(Tokyo University)相撲部OB会長の平原利明(Toshiaki Hirahara)氏は、アマチュア相撲が女子に門戸を開いたのは、五輪で正式種目になる可能性を模索する活動の一環であると語っている。

 その一方で平原氏は、数百万人がテレビ観戦する大相撲は、その宗教的かつ精神的な伝統文化を守り続けていく必要があるとも指摘している。

 平原氏は、「女性が神聖な土俵に上がることができないのは、そこが神の領域であるという理由から理解できます」と語った。

「だけど、アマチュアの相撲は神様とは関係なく、スポーツなので、女子も男子も平等であるべきです」

 相撲の起源は2000年前までさかのぼり、日本古来の神事の一つである神道の儀式に欠かせないものだった。

 ところが、八百長相撲や(野球)賭博に加え、2007年には若手力士の死亡に発展した「いじめ」などの不祥事が相次ぎ、相撲に対する評価は下落した。また、暴力団組織との関係も取り沙汰され、その失墜したイメージから脱却できずにいる。

 さらに、日本人横綱不在が、相撲人気の陰りの一因となっている。現在の横綱は、1月に歴代最多となる通算33回目の優勝を果たした白鵬(Hakuho)を含めた3人全員がモンゴル出身だ。