■密輸に対する抑止力はほぼ皆無

 象牙は通常、20フィート(約6メートル)もしくは40フィート(12メートル)のコンテナで密輸される。豆類やニンニク、貝殻など合法な輸出品の中に紛れ込ませたり、偽の壁や床に隠されたりすることもある。

 野生動物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」は、摘発される象牙の量が増えている背景に、洗練された犯罪ネットワークの存在があることを指摘する。最近では、500キロ以上の象牙の密輸が摘発されることも多いという。

 象牙の市場価格は1キロ当たり2100ドル(約25万円)以上。逮捕されて有罪判決が下されることはまれで罰金も少額。そうなると密輸に対する抑止力はほぼ皆無と言っていい。得られる利益を考えれば、たとえ拘束されようとも、密輸はやる価値のある犯罪ということになる。

 過去5年間にゾウやサイの密猟に関してケニアの裁判所で下された判例を調べると、有罪判決を受け実際に禁錮刑に処されたケースは、わずか7%にとどまっていた。同国では、この種の犯罪に対して最大10年の懲役刑が科せられることになっている。

 環境NGO「LAGA」の創設者で活動家のオフィール・ドローリ(Ofir Drori)氏は「ケニアで象牙の密輸で逮捕されて投獄されたなら、それは奇跡だ」とコメントし、同国での現状を嘆く。

 今後、逮捕・起訴されたモハメド被告の裁判を通じて国際シンジケートの実態が明らかにされることで、その他多くの密売組織にも警告を発することができるとし、環境活動家らはこの裁判の行方を注視している。(c)AFP/Tristan McConnell (c)AFP/Tristan McConnell