【2月4日 AFP】(図解追加)英下院は3日、3人のDNAから胚を作る新技術の実用化を認める法案を可決した。これにより英国は、賛否両論を呼んできた同技術を認める世界初の国となった。

 英下院は、3人のDNAを用いて体外受精(IVF)児を誕生させる技術を合法化する法案を382対128の賛成多数で可決した。法案は今月中にも上院(貴族院)を通過する予定で、同技術の運用は来年にも始まる見込みだ。

 同技術は、母親から子どもに受け継がれる深刻な遺伝性疾患の予防を目的としている。この技術で作製される胚は、父親と母親の両方から通常の核DNAを受け継ぐのに加えて、ドナー女性の健康なミトコンドリアDNA(mDNA)を少量含むことになる。

 英医学研究支援団体ウェルカムトラスト(Wellcome Trust)のジェレミー・ファラー(Jeremy Farrar)代表は「重大な疾患を抱える子どもを世話することがどういうものかを知っている家族は、ミトコンドリアの提供を受けることが自分たちにとって正しい選択肢かどうかを決めるのに最もふさわしい立場にある」と語る。「このような家族にその選択肢を与える今回の議決を、われわれは歓迎する」

 今回の法改正の影響を受けるのは、英国で最大2500人いるとされる、遺伝性のミトコンドリア病を持つ出産適齢期の女性。だが反対派は、法改正により将来的に「デザイナーベビー」が作られる可能性があると主張している。

 ミトコンドリアは細胞内にある構造体で、身体を機能させるエネルギーを生成する働きを持つ。ミトコンドリアDNAは母系で遺伝し、その変異が原因で発症するミトコンドリア病は、視力障害や糖尿病、筋肉消耗疾患などの症状を引き起こす。英保健省は、この種の変異を持つ新生児が英国内で毎年125人前後産まれていると推定している。

 新法の下では、英政府の直轄機関「ヒト受精・胚機構(Human Fertilisation and Embryology AuthorityHFEA)」がこの技術の認可を行う。同技術を用いた初の体外受精処置は、英ニューカッスル(Newcastle)にある最先端の研究施設で行われる予定だ。(c)AFP/Dario THUBURN