【2月3日 AFP】米国への査証(ビザ)なし入国を特定の国籍に限って認める「ビザ免除プログラム(VWP)」について、イスラム過激派に悪用され米本土が攻撃を受ける恐れがあるとして、米議員らから制度変更を求める声が上がっている。

 現在、ビザ免除プログラムは日本を含む38か国からの観光客を対象としている。しかし、米上院情報特別委員会(Senate Intelligence Committee)前委員長のダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)上院議員は、同制度を「米国のアキレス腱」と呼び、制度の厳格化を求めている。

 1月にフランス・パリ(Paris)で風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)などが襲撃された事件を受け、米政府や議会周辺では、米同盟国の旅券(パスポート)を持つ過激派がビザ免除プログラムを使ってひそかに米国に入国する可能性への懸念が再燃している。

 ファインスタイン氏はビザ免除プログラム改定法案の策定に着手しており、側近によれば近く議会に提出する予定だという。

 一方、同プログラムの改定を目指す政治家の一人、ミシガン(Michigan)州選出のキャンデス・ミラー(Candice Miller)下院議員(共和党)は、ビザ免除の対象国が潜在的テロ容疑者に関する重要な情報を提供しなかった場合、国土安全保障省(DHS)がその国へのプログラム適用を一時停止できるようにする法案を提出した。

 米政府は2001年9月11日に起きた同時多発テロを受け、ビザ免除プログラムを大幅に改定した。2008年には、ビザ免除渡航を希望する人を対象とした「電子渡航認証システム(Electronic System for Travel AuthorizationESTA)」制度を導入。渡航希望者の身元を米国への入国前に把握することを可能としていた。

 だが一部の米議員からは、米当局がテロ容疑者のデータベースと渡航希望者の照合を続けている一方で、プログラムの対象国が過激派の疑いのある人物の特定に必要な情報を共有する義務を怠っているとの批判も出ている。

 専門家らは、1986年に始まったビザ免除プログラムについて、米国の観光業の発展と富裕国との貿易促進に不可欠な存在だと指摘する。

 2012年には、短期滞在ビザで訪米する人の約4割に相当する191万人が、同プログラムを利用して米国に入国した。対象38か国の大半は欧州諸国で、日本や韓国、豪州などの米同盟国も含まれ、最近チリが追加された。(c)AFP/Laurent BARTHELEMY