■「異常な現象」

 少なくとも20人の子どもたちがこれまでに殺害された。連続殺人事件の発生を受け、警察はこの2~3か月の間に同国各地で少なくとも25件の子ども誘拐事件の捜査を開始した。

 警察は、殺人事件の発生頻度が異常なまでに増加しているとして、「現実で異常な現象だ」と指摘。住民の間では、子どもたちが魔術の儀式のいけにえとして犠牲になっているのではとの不安が広がっている。ブレドゥ・ンビア(Brindou M'Bia)国家警察長官は先月、遺体の大半が「手足を切り落とされたり、性器がなかったり、首を切り落とされた状態で発見されている」と語った。

 一方、ハメッド・バカヨコ(Hamed Bakayoko)内相は先月27日に「儀式に関わる犯罪の類型については、われわれは良く理解している。こうした犯罪を通して力や富を得られると信じ込まされてしまうのだ」と述べた。

 スレイマン君たちを襲った男は、バカヨロ内相の言葉を体現しているようにも見える。ドリッサ・クリバリ(Drissa Coulibaly)と名乗った38歳のこの男は、拘束されたとき何か月も路上で暮らして汚れた体に赤と白のジャージーを着ていた。

 勾留中にAFPの取材に応じたクリバリ容疑者は、「神にやれと言われた。子どもたちの頭を切り落として持ってくれば、王にしてやると言われた。やりたくないと言ったのに、神は聞こうとしなかった」と語った。忠誠心を示す「剣」を手にするのが目的だったといい、神とはカラスの格好をした「天使」を通じて対話していたという。

 捜査官の一人は容疑者について「(狂ったふりができるほど)非常に頭がいいか、とても狂っているかのどちらかだろう」と語った。一方、襲われたセドリック君の母親は、軍に尋問されている容疑者を見て「彼は自信満々だった。狂ってなどいなかった」と語った。

 捜査官によると、クリバリ容疑者はインターネット上で知り合った「ブラウザーズ」という依頼主のために「3人の子どもを殺した」といったん自供したが、後になってこれを否定した。「ブラウザーズ」とは、インターネット詐欺を行うグループを差すときに使われている言葉で、証拠はほとんどないが子どもたちの殺害の黒幕だと広く思われている。

 10年にわたる政争と内戦の惨禍で困窮しているコートジボワールでは、10月に大統領選が行われる。この国では、政治家たちが有権者の支持を得ようとする選挙の年にはいつも、人間、特にアルビノ(先天性色素欠乏症)の人々が魔術のいけにえのために誘拐され、行方不明になったという怪しげな噂が広まる。(c)AFP/Joris FIORITI