【1月30日 AFP】ロシアの首都モスクワ(Moscow)郊外に住む7児の母が、同国軍部隊の動向についてウクライナ大使館に電話をしたことを理由に、国家反逆の疑いで逮捕された。ロシア政府がウクライナ介入の隠蔽(いんぺい)を試みていることを改めて示す事例だ。

 AFPの取材に応じた夫のアナトリー・ゴルロフ(Anatoly Gorlov)さんによると、スベトラナ・ダビドワ(Svetlana Davydova)さん(36)は先週、モスクワ西郊の町ビャジマ(Vyazma)の自宅にいたところ、室内に突入してきた黒制服の男性集団により身柄を拘束された。夫婦の末娘は生後2か月半で、ダビドワさんはまだ授乳中だったという。

 国によりダビドワさんの弁護人に選任されたアンドレイ・ステベネフ(Andrei Stebenev)氏はAFPの取材に対し、ダビドワさんはモスクワ・レフォルトボ(Lefortovo)地区にある重警備の収容施設に勾留されていると語った。国家反逆罪で有罪になれば、12~20年の懲役刑を言い渡される可能性がある。

 ステベネフ氏は、ダビドワさんが「電話してはいけないところに電話し、言ってはいけないことを言った」と説明したが、ロシア連邦軍参謀本部から本件は「国家機密」に当たると言われているため、その他の情報は口外できないと語った。一方のレフォルトボ地裁関係者も、「秘密裁判」の存在を認めている。

 ゴルロフさんによると、ウクライナ紛争をめぐり反戦の立場をとってきたダビドワさんは昨年4月、ウクライナ大使館に電話をかけていた。その際、ビャジマにある軍事基地がもぬけの空になっていると伝え、基地の兵士たちが国外に配備されていることを示唆したとみられている。

 さらにダビドワさんはウクライナ大使館職員に対し、ある軍人の話を立ち聞きした内容として、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の部隊が、ある任務に派遣される予定だと伝えたとみられる。同部隊は平服を着用し、少なくとも選挙まで任務は続く予定だったとされる。部隊の派遣先について、ダビドワさんは昨年5月に大統領選挙が行われたウクライナではないかと疑っていたという。

 ゴルロフさんは、ダビドワさんは国を裏切ったりはしていないと主張している。「彼女は、自分の国の軍隊にある種の陰謀に加担してほしくなかったのです」。夫婦はともに、昨年3月にロシアが宣言したクリミア併合には反対していたという。

 ダビドワさんは、ゴルロフさんとの間にもうけた4人の子どもの他、ゴルロフさんと前妻との子ども3人も育てていた。ゴルロフさんは、捜査に協力しないと子どもたちの親権を失う危険があると告げられたと話している。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO