【1月24日 AFP】1912年4月15日未明に起きた豪華客船タイタニック(Titanic)号の沈没で避難方法をめぐり当時、英国の世論から非難を浴びた貴族の女性が書いた手紙が22日、米ボストン(Boston)で開催された競売で、1万1875ドル(約140万円)で落札された。

 主催した競売会社RRオークション(RR Auction)は、タイタニック号にまつわる品を扱っている。今回出品されたのはタイタニック号から生還した英国の貴族でファッション・デザイナーだったルーシー・ダフ・ゴードン夫人(Lady Lucy Duff-Gordon)が、事故の1か月後に米国の友人に宛ててロンドン(London)で書いた手紙。

 ゴードン夫人は夫のコスモ・ダフ・ゴードン卿(Sir Cosmo Duff-Gordon)と一緒に、英サウサンプトン(Southampton)から米ニューヨーク(New York)へ向けて初航海に出発したタイタニック号の1級船室に乗っていたが、定員40人の救命ボートにタイタニック号の乗組員7人を含む12人しか乗っていない状態で脱出したことが判明し当時、あざけりの対象となった。

 事故から1か月がたち、米国の友人に向けて書いた手紙でゴードン夫人は「私たちの無事を案じてニューヨークから電報を送ってくださるなんて、なんとお優しいお気遣いでしょう。私たちが英国へ帰国してからの反応といえば、助かったことがまるで、正しい行いをしなかったかのようです。はしたないことではありませんこと?」と、自分に向けられた非難に対する心情を吐露している。

 乗客乗員約1500人が死亡したタイタニック号の悲劇は、現在でも最も語られることが多い海難事故となっている。

 ダフ・ゴードン卿夫妻は、生存者救出のために救命ボートが戻らないようタイタニック号の船員に賄賂を払った疑いがもたれたが、英当局は事実無根の批判だと結論付けた。1912年5月から同年7月中旬まで開かれた英国の事故調査委員会で証言した乗客はゴードン卿夫妻だけだった。(c)AFP