【1月24日 AFP】エジプトの至宝であるツタンカーメン(Tutankhamun)王の「黄金のマスク」が「下手な修復」を施され、表面に硬化した接着剤が残ったとして文化遺産保護組織が23日、同国の考古相を告発する姿勢を示した。

 首都カイロ(Cairo)のタハリール広場(Tahrir Square)に近いエジプト考古学博物館(Egyptian Museum)で23日にAFPの記者がマスクを見たところ、外れてしまったあごひげの部分を付け直そうとして接着剤を使いすぎた痕跡が見てとれた。ある匿名の博物館関係者によると昨年、照明を修理するために展示ケースからマスクを出そうとした際の不手際で、あごひげの部分が外れてしまったのだという。

 エジプト考古学博物館の館長は、文化財の保護担当者らによってマスクが破損したという情報を否定した。マムドゥーフ・ダマティ(Mamdouh al-Damati)考古相も、3000年前の遺品がいいかげんに扱われたことはないと明言したが、博物館員たちがなぜマスクを修復する必要があったのかについては説明しなかった。

 エジプト学者のモニカ・ハンナ(Monica Hanna)氏は23日、ツタンカーメンのマスクのあまりにひどい状態にショックを受けたため、古代エジプトの文化遺産を不適切な取り扱いや略奪から守る活動をしてきた文化財保護組織「文化遺産タスクフォース」として24日に検察当局に告発するつもりだと述べた。

 匿名の博物館関係者はマスクを展示ケースから出す際に「集中力が欠けていたのか、マスクがケースに当たり、ほとんど落ちそうになったので(学芸員が)腕でマスクを抱えたところ、あごひげの部分が外れてしまった」と語った。この長いあごひげの部分は、元々は釘のような部材でマスク本体に止めてあったのだが、いつしか外れるようになっていたという。「そういう(マスクを落としそうになる)ミスは起きるものだ。ところが怖くなった学芸員がさっさと自分で『直して』しまったため、事態が悪化してしまった」

 学芸員が使ったエポキシ樹脂系接着剤はとても短い時間で硬化したという。 この関係者は「(本来)修復にはゆっくり硬化する素材を使い、固まるまで数時間~24時間支えておかなければならない」と指摘した。「修復作業には、ダメージを与えてしまったときに痕を残さず容易に取り除ける接着剤を使う必要がある」

 エジプト考古学博物館の館長は半国営の中東通信(MENA)に対し、エポキシ樹脂系接着剤は文化遺産を修復する際に国際的に使われていると述べている。(c)AFP