■国民の93%が呪術信じる

 タンザニアの人権団体によると、2013年に報告された「魔女」絡みの殺人は765件だった。だが実際には、はるかに多くの人が殺害されているだろうと警告する。

 法と人権センター(Legal and Human Rights Centre)のポール・ミコンゴティ(Paul Mikongoti)氏は「死者数は報告された件数しか集計していない」と語る。「我々が把握できていない人数が非常に多い」

 目が充血していただけで「呪術」を使うしるしとみなされることさえある。だが、煙の上がるたき火で何十年間も調理をしていれば、目の充血はごくありふれたことだ。

 一方、国連の専門家によると、2000年以降に殺害されたアルビノの人々は、少なくとも74人に上る。アルビノの人の遺体は7万5000ドル(約900万円)もの値段で売買されることがある。これは貧しいタンザニアの人々にとって大変な金額だ。観測筋によると、10月の総選挙を前にアルビノの人々に対する攻撃が増えている。政治家や支援者たちが幸運を求めて呪術師たちのもとへ通うからだという。

 タンザニア国民4900万人の宗教は、イスラム教、キリスト教、伝統宗教でほぼ均等に分かれている。だが一方で、米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の2010年の調査によると、呪術を信じる人は国民の93%に上り、調査したアフリカ19か国の中で抜きんでた割合だった。

■「私の財産を奪うためだった」

 タンザニアの法律は女性にも平等に相続権を認めているが、これに反対している人も多い。活動家らによると、財産を奪い取ろうとする親族から魔女だと糾弾されることもあるという。

「男性は独占することを好む。そして姉妹たちが抵抗し始めると、彼女たちの財産──ウシや農地など──を得る唯一の手段は、『この女は魔女だ』と糾弾することだと考えるようになる」と、高齢者の権利擁護団体ヘルプエージ(HelpAge)のフラビアン・ビファンディム(Flavian Bifandimu)氏は説明する。「それで姉妹たちの死は正当化され、財産は自動的に男性のものとなる」