【1月23日 AFP】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)は21日、イスラエルの農場に出稼ぎに来たタイ人労働者たちが低賃金や危険な労働環境、長時間労働下に置かれているとする報告書を発表した。報告書は「A Raw Deal: Abuses of Thai Workers in Israel's Agricultural Sector(不当待遇:イスラエルの農業部門におけるタイ人労働者の酷使)」と題されたもので、全48ページ。

 これによると、イスラエルで働く約2万5000人のタイ人労働者たちは法律に違反した環境で労働に従事している。「イスラエル農産業の成功は多くをタイからの出稼ぎ労働者に依存している。しかしイスラエル政府は、彼らの権利を擁護し搾取から保護する対策を全くと言っていいほど行っていない」と報告書は批判する。

 報告書をまとめるにあたってはイスラエル国内10か所の農業コミュニティーで働くタイ人労働者173人にインタビューを実施しているが、その全員が報酬は法定最低賃金を下回り、労働時間も法定労働時間を超えていた。労働環境でも安全が保証されていなかったという。さらに9か所のコミュニティーでは、労働者らはその場しのぎで作られた不十分な施設に寝泊りさせられていた。

 米ニューヨーク(New York)に本部を置くHRWの報告書について、イスラエル当局からのコメントはまだないが、同国の非政府組織(NGO)「ワーカーズ・ホットライン(Workers Hotline)」は同団体が独自に行った調査結果を裏付けるものだとの声明を発表。「イスラエルの農業部門は出稼ぎ労働者の権利と人権侵害の温床となっている」と訴えるとともに、「HRWの報告書にあるように、農業に従事する出稼ぎ労働者たちが悲惨な状況に置かれている主な要因は、法的措置の欠如にある」と指摘した。(c)AFP