【1月21日 AFP】英数学者で暗号解読者のアラン・チューリング(Alan Turing)によって書かれた手書きの原稿が、米ニューヨーク(New York)で4月に競売にかけられることになった。米競売大手ボナムズ(Bonhams)が20日、明らかにした。

 ボナムズによると、この未公開の手稿は、第2次世界大戦(World War II)中の政府系暗号学校ブレッチリー・パーク(Bletchley Park)で、1942年に書かれたもので、チューリングは当時、ドイツ軍の暗号システム「エニグマ(Enigma)」の解読に取り組んでいたとされる。落札推定価格は少なくとも100万ドル(約1億1800万円)に上るとみられている。

 ボナムズは、全56ページの手稿について「チューリングによる現存するほぼ唯一の長文の自筆原稿であり、これまで公開されたことはない」としている。 また数学的表記とコンピューター科学の基礎が見られる原稿からは、「天才の思考過程の卓越した洞察」を知ることができるとした。

 この手稿は、イングランド(England)のケンブリッジ(Cambridge)大学キングス・カレッジ(King's College)の特別研究員だったチューリングが、ケンブリッジの文房具店から購入したノートに記されていた。1954年の死後、友人で同僚数学者のロビン・ガンディ(Robin Gandy)に残した書類の中から見つかった。

 4月13日に予定の競売は、時代を先取りしたコンピューター科学者で哲学者、暗号学者のチューリングの生涯と業績を描いたハリウッド映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(The Imitation Game)』の公開と相まって、大きな注目を集めると予想される。2月に発表予定のアカデミー賞では、8部門でノミネートされている。(c)AFP