【1月21日 AFP】ロシア当局は20日、同国南部にある世界最大の淡水湖、バイカル湖(Lake Baikal)の水位が過去最低の水準にまで低下していると警告した。環境活動家らは、干ばつと周辺地域による湖水の工業利用が原因だと指摘している。

 バイカル湖に面したロシア南部ブリャート(Buryatia)共和国の非常事態省は、湖に接する村などで水不足が報告されていることを受け、厳戒態勢を敷くと宣言。

 ロシア政府が許容するバイカル湖の最低水位は標高456メートルだが、現在の水位はこれを8センチ上回るのみとなっている。ブリャート共和国の天然資源環境相によれば、水位はここ60年で最低レベルの状態が続いている。

 地球上にある淡水の約20%をたたえるバイカル湖から流れ出すアンガラ川(Angara River)沿いにあるイルクーツク水力発電所は、大都市であるイルクーツク(Irkutsk)に電力を供給。このほか地域にある大型のアルミニウム工場にも、電力を供給している。さらに、アンガラ川沿いには別の水力発電所も複数ある。

 バイカル湖は水を渇望する地元住民と大企業との争いの原因となってきた。また、環境活動家や漁業者、そして湖の水による水力発電に依存する産業界の間では、低下し続ける水位についての議論が続けられてきた。

 バイカル湖とモンゴルに接するブリャート共和国のビアチェスラフ・ナゴビチン(Vyacheslav Nagovitsyn)大統領は、地下の源泉が枯渇し始めたり、魚類の生息数が減少したり、山火事の発生頻度が増加しているとの報告があると述べている。

 さらに、ロシアと中国、モンゴル、米国の環境活動家が組織する非政府組織(NGO)「国境なき川(Rivers Without Boundaries)」のアレクサンドル・コロトフ(Alexander Kolotov)氏はAFPに対し、発電会社は毎年、発電量の増加を目的に水位を低下させることを希望しているが、これは生態系に悪影響を与えると指摘した。

 一方、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は、昨年は多雨傾向が予想されていたため、バイカル湖の水位基準は昨春に引き下げが決められたものの、実際には昨年の降雨量が少なく、水位は低いままだったと指摘している。

 ロシア政府は来週開催する特別会議で、水力発電向けの利用を継続するため、バイカル湖の最低水位を定めた現行基準を引き下げるかどうかを決定する予定だ。(c)AFP