【1月14日 AFP】ウクライナ東部で13日、親ロシア派武装勢力が発射したとみられる長射程のロケット弾が都市間バスを直撃し、乗客ら11人が死亡、17人が負傷した。当局が発表した。

 地元警察は、親露派の拠点ドネツク(Donetsk)とアゾフ海(Sea of Azov)に面するウクライナ南東部とを結ぶ幹線高速道路上に政府軍の兵士らが設置した検問所を標的として親露派がこのロケット弾を発射したが、狙いが外れてバスに当たったとみられるとしている。

 ウクライナ政府軍と地元警察はいずれもAFPに対し、この砲弾により女性7人と男性4人が死亡したと伝えた。また地元当局によると負傷者は17人で、バスが砲撃を受けたドネツクの南西35キロに位置するボルノバハ(Volnovakha)付近の病院に搬送されたという。

 一方の親露派側は、政治指導者も部隊の指揮官らも関与を否定。親露派が一方的に樹立を宣言したドネツク人民共和国(Donetsk People's Republic)の指導者の一人、アンドレイ・プルギン(Andrei Purgin)氏はAFPの電話取材に対し、「われわれの拠点からボルノバハのように遠く離れた場所まで攻撃できるはずがないと思う」と語った。ドネツク分離独立派の武力部門のエドゥアルド・バスーリン(Eduard Basurin)副司令官はロシア通信(RIA)に、「わが方からは誰も何も発射していない」と述べた。

 親露派と政府軍の双方は毎日のように、標的以外の場所に着弾して民間人を死傷させたロケット弾や砲弾について互いに相手方を非難している。

 双方は昨年9月5日停戦に合意。しかし戦闘はごく一部しか抑止されておらず、親露派による分離独立運動の鎮静化にもほとんど役に立っていないと批判されている。この停戦合意締結後では、今回の砲撃による犠牲者数が最多となった。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領は、9か月に及ぶ紛争を終結させるためロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領との首脳会談を実現させ、できることならプーチン氏直々に停戦合意に署名してもらおうと手を尽くしていたが、この日の事件でその努力も水の泡となった。

 1990年代バルカン半島(Balkans)で起きたユーゴスラビア紛争(Yugoslav War)以来、欧州で最悪規模となっているウクライナ紛争の終結に向け、欧米諸国からの主要な仲介役となっているドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は、ウクライナ東部で日常的に暴力的な事態が続いている以上、そのような首脳会談を開くのは時期尚早という見方を示している。ベルリン(Berlin)で12日に行われた外交交渉でも、当面はそのような首脳会談の実施は目指さない方向が確認された。(c)AFP/Yulia SILINA