■素人らしさを晒した逃走劇

 しかし慎重に立てたとみられる犯行計画は、逃走時にほころんだ。2人は追跡されていなかったにもかかわらず、逃走に使った黒のシトロエン(Citroen)C3で衝突事故を起こした。次に付近の車を奪って逃走したが、このとき兄のサイド容疑者は身分証明書を最初の車に置き忘れるという大失態を犯し、容疑者の早期特定につながった。

 さらに、24時間ほどは警察の追手をうまく逃れておきながら、翌8日にガソリンスタンドで強盗を働いて通報され、警察に決定的な手掛かりを与えた。

 最後にクアシ兄弟は、パリ郊外の小さな町で印刷工場に押し入り人質をとったが、この際の行動はまさしく行き当たりばったりに見えた。2人は工場を訪れた印刷会社の男性職員を逃した上、工場内に別の男性が隠れていたことにも気づかなかった。

 フランスを過去数十年で最悪のテロの危機に陥れたクアシ兄弟だったが、警察の部隊が工場内に立てこもる兄弟を追い詰めようと近づいたときにはもはや何の切り札も持たず、銃を発砲しながら工場の外へ飛び出し、集中砲火を浴びて死亡した。

 ある警察関係者は「彼らは(シャルリー・エブド本社から)逃げられると思っていなかった。逃走については、襲撃のように慎重に計画していなかったのは確かだ」と語った。