【1月8日 Relaxnews】パリにある「セルジュ・アモルソ(Serge Amoruso)」の店内に並ぶバッグには、何かが欠けている。高額な値札でもないし、トップクオリティーの職人技でもない。

 見つからないのは、1990年代の消費文化の代名詞であるブランドのロゴだ。アモルソのメッセージは明快だ。彼の顧客(その多くは中国人や日本人だ)が求めているのは、自分だけに作られた品物という特別感なのだ。そのためなら彼らはいくらでも払う。

 人気が高くなりすぎて名声を失うブランドも見受けられるなか、充分な資金がある富裕層は希少価値を求めてアモルソのような職人たちに関心を向けつつある。

■顧客と一緒に作り上げる製品

 アモルソの顧客たちは雨の中、デパートの前に列を作ったりはしない。彼と1対1で会い、バッグの形やスタイル、レザーの種類から、留め具や裏地の素材にいたるまで共に決めていく。

 2人の弟子と一緒に彼が1年間につくるバッグの数は100個ほど。1個当たりの価格は平均して2500ユーロ(約35万円)だ。

「すべての製品にストーリーがあり、私の顧客はそれを求めてやってきます」と、アモルソは語る。「ある日本人の顧客はiPhoneケースがほしいと言って私の元を訪れましたが、最終的にはスーツケースをオーダーしていきました。水牛革でこれを作るのには8か月を要しましたし、顧客にとっても大きな出費になりましたが、私が期待以上のものを作ることを、彼は知っていたのです」

■レザーの可能性に目覚めた幼少期

 レザーに対するアモルソの情熱が芽生えたのは子どもの頃。母がもっていたレザースカートでものづくりをしたときだった。後に「この素材なら何でもできる」と思ったという。

 学業を終え専門的な訓練を積んだ後、彼は「エルメス(HERMES)」に就職し、7年間働いた。「素晴らしい素材に触れる機会を得られました。センスやエレガンスとは何かを学びました」

 何年にもわたり、アモルソのもとには非常に多くの高級ブランドからバッグなどの制作依頼が舞い込んでくるが、彼はいつも「自分は下請けではないから」と断っている。どこかのブランドのために作るよりも、1点1点に自分の印――ロゴという形ではないが――が入ったバッグを作りたいのだ。

■すべては美しい作品のため

 アモルソは特に、エキゾチックなアカエイの革の使い手として知られる。「アカエイの革のバッグは無理だとずっと言われていたんですが、あえてそこに挑戦して成功しました」

 だが自分の名声のために技術的な達人になることに関心はない。腕を磨くのはあくまでも「美しい作品を作るため」だ。

 目利きの客でも満足させられる品が作られるのは、パリ東部にある彼の作業場だ。機械が全くないその作業場で、すべて手作業で作られる。「ブランドのロゴが付いたバッグが高級品であると私たちは信じ込まされてきました。ですが、ロゴは単にマーケティングの問題であって、質を保証するものではないんです」(c)Relaxnews/AFPBB News