■前線で武器製造、軍需産業構造にも影響

 現実の世界でもすでに最初の数歩が踏み出されている。BAEシステムズは昨年末、トーネード(Tornado)戦闘機に初めてプリンターで製造した金属部品を実装した。同社は最近発表した映像で、3Dプリント技術によって航空機内で別の航空機を製造し発進させる構想を示した。同社のスティーブンス氏は「時間はかかるが究極の目標は、航空機全体を3Dプリント技術で製造することだ」と述べている。

 しかし、3Dプリント技術による真の革命は、何を作れるかよりも、どこで作れるようになるかだ。戦闘地域に3Dプリンターを持ち込めば、戦闘そのものと軍需産業が必ず激変するというのは、米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」で未来の武力衝突について研究するピーター・W・シンガー(Peter W Singer)氏だ。「(現在)軍需産業の業者は武器を売りたがるだけでなく、50年に及ぶ供給チェーンを手にしたがる。しかしアフガニスタンのような前哨地で、兵士が自分たちでソフトウエアを使い、交換部品を微調整しプリンターで作り出せたらどうなるだろう」。

 こうしたことが可能になれば、軍は民間の軍需産業企業をいっさい切り捨てかねない。さらに3Dプリンターを製造ラインロボットと組み合わせれば、残りの部分も極めて合理化できる。米国のように政策的に全土に軍需産業が配置され、数百万人の雇用を支えている国では、このような変化は多大な政治的意味をもたらす。