【12月29日 MODE PRESS】カナダ出身の写真界の巨匠ダグラス・カークランド(Douglas Kirkland)は1962年、ココ・シャネル(Coco Chanel)の仏パリ(Paris)の自宅に3週間招かれ、雑誌『ルック(Look)』の撮影を行った。ダグラスはシャネルに密着した当時を振り返り、極めて秘密主義だったシャネルがなぜ自分に対して打ち解けてくれたのか、今でも分からないと語った。

 シャネルが内向的な人だったかと聞かれたダグラスは「間違いなくそうでした。でもココは私に対しては、どういうわけか自分をさらけ出してくれました。何がそうさせたのか、今でも100%は分からないのですが、私のことは受け入れてくれたようでした。私は心の中で『実生活ではいなかった息子のように思えたのだろうか、それとも過去の恋人を思い出していたのか?』と自問自答していました」

 撮影時に80歳だったシャネルは、7年後、87歳で死去した。当時のシャネルと同じ80歳になったダグラスは、撮影期間中にもシャネルの疲れはすでに目に見え始めていたと認めた。「ココがドレスやコートを作っていると、まるで美しい彫刻が出来上がっていくかのように見えました。彼女は自分の手を使って何もかもやっていましたよ、他人任せにはしませんでした。自分でやるのが好きだったんです。仕事をするココの手をアップで撮った写真があるんですが、その手はかなり疲れて見えました。『こんな手になってしまったわ、疲れているものね。私の手はとても多くのものを見てきたもの。私はこの手で語るの』とココは言いました。私にとって、それは非常に重要な言葉でした」

 後にブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)、ジュディ・ガーランド(Judy Garland)、エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)といったそうそうたる面々の撮影を任されたダグラスだが、シャネルを撮影した経験が人生のターニングポイントになったという。「私の人生を大きく変えたのは、あの3週間でした」(c)Bang Showbiz/MODE PRESS